一方、北海道大学病院がウェブ上で公開している感染対策マニュアル第6版では、手袋着用が不適切な場面も紹介しています。

(1)血圧・体温・脈拍を測る時
(2)入浴や着衣の介助時
(3)患者搬送時
(4)(オンライン)カルテの記入時
(5)経口薬の配布時
(6)食事の配膳や下膳時など

 一般的に、肌に触れるというのは、親しい間柄にしか許されない行為でしょう。それでも、医師や看護師などの医療従事者に「触れられる」ことで安心する場面は、病院の中にまだ存在します。

 患者さんの不安を少しでも軽くするための「手当て」と、院内の安全を守るための「スタンダード・プリコーション」。

 前者は目の前の患者さんの気持ちを理解しないとできない行為ですし、後者は考え方を正しく理解しなければ意味がありません。

 私たち医師が、必要な場面で手袋をすることで患者さんの不安が増強しないようするためにも、スタンダード・プリコーションは一般の方にも広めていきたい考え方です。

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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