本田や今季からスペイン2部に赴いた岡崎慎司(ウエスカ)や香川真司(サラゴサ)もカレン氏と同じ思いをしていることだろう。岡崎はレスター時代の15-16シーズンに史上初のプレミアリーグ制覇を果たした主力の1人であり、香川もかつてはドイツ・ブンデスリーガ2連覇の立役者となってマンチェスター・ユナイテッドに引っ張られた選手である。それだけの実績があっても、欧州5大リーグの1部に残ることはできなかった。

 2人とも「いずれはスペインでプレーしたい」という長年の悲願を優先した部分もあるだろうが、5大リーグから好オファーが届いていれば当然そちらを選択していたはず。「外国人枠」というもう1つの壁も突きつけられる日本人アタッカー陣が欧州トップで長く活躍し続けるのは、本当に至難の業というしかない。

 現役引退後、千葉県リーグ1部のローヴァーズ木更津FCのオーナーとなり、選手育成にも携わっているカレン氏は「DFやGKの方が長くトップレベルでプレーし続けられるという『欧州基準』を子供たちに伝えていくことも大事だと思う」と話している。

「フェンロ時代の同僚で、30代になった今もプレミアリーグで活躍している麻也(吉田=サウサンプトン)もそうですけど、やっぱり後ろの選手の方が実績を評価してもらいやすいのは確か。アタッカーで年齢を重ねても残っていけるのは、クリスティアーノ・ロナウド(ユベントス)やリオネル・メッシ(バルセロナ)らごく限られたスーパーな選手くらいなんです。
 日本人はみんな華やかなアタッカーに憧れるけど、長生きできる後ろのポジションを目指す子がもっと出てきてもいい。ウチのクラブではそちらに力を入れることも考えていきます」

 そういう育成のビジョンが日本サッカー界には欠けていたのも確か。世界に通じるGKやDFを育てる重要性をもっと多くの人が認識することは大事だろう。ただ、一方でC・ロナウドやメッシのような傑出したアタッカーが出てくれば、30代問題も克服できるはず。欧州サッカー界の波に抗おうと躍起になっている本田にまずは突破口を開いてもらいたいところ。そして岡崎や香川には、スペイン2部でも圧倒的な存在価値を示し、日本人の評価を上げる努力をこれまで以上に払ってほしいものだ。誰かが現状を変えるきっかけを作らなければ、日本人ベテランアタッカー不遇時代は続いてしまうのだから。(文・元川悦子)