夏はメジャーリーグはやっているけど、アメリカで人気があるアメリカン・フットボールは9月~翌年2月がシーズン。アイスホッケーも、プロバスケットボールも冬。テレビドラマも10月の新年度にあわせて新番組が始まって翌年5月か6月ごろまで、その後は人気番組の再放送をやっているということが多いんです。だからソフトがなくなる8月にオリンピックをやりたいわけですよね。

 オリンピックは開催国の負担が大きすぎて、1984年のロサンゼルスオリンピックぐらいから、アメリカのテレビ局が莫大な金を投じるようになりました。以降はその金がないと開催できない状態、つまりアメリカのメディアを中心にしたオリンピックしかできないという現実もある。それなら時差の大きいアジア圏とかで開催しちゃうと、時間や季節なんかの問題が起きるんですよね。そろそろ、そのあたりを考え直す時期にきているかもしれないですよね。

 おまけに、かつてはオリンピックを開催すれば公共事業で儲かるという説があったけど、もう「ドル箱」ではなくなっています。北京五輪やロンドン五輪でも、結局は赤字だったし、東京にも好景気がくるという感じはしないですよね。

 東京で開催するからには、大成功するように一生懸命やらなきゃいけないんだけど、そもそもオリンピック招致ってなんだったんだってことにもなりかねない。どれだけプラスになるのか、被災地の復興とか日本が今抱えている問題の役に立つのか、終わってからすべての答えが出るだろうけど、見事に赤字だと思うんです。

 1964年の東京オリンピックの栄光という幻想を追い求め過ぎたのか、やり方が古かったのか。いまのところは金がかかることばかり。日本のアスリートにとってはすごくいいチャンスだし、観戦する方もすごく盛り上がるとは思うんだけど……。

 ラグビーW杯は日本代表がベスト8という好成績を残して、日本中が盛り上がったし、海外から応援に来ている人たちが長期滞在してくれて経済的にも良い影響が出ているんじゃないかと感じます。南アフリカのサポーターを次の試合まで関西でアテンドするとか、そういう声も聞きます。やっぱりW杯とオリンピックは違うなと思いますよね。

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「東京オリンピックへの唯一の期待」