アメリカという環境に支えられている部分もあるという。時間はかかるだろうが、日本にもそういう価値観が少しずつでも広がって欲しい、と痛感する。

「将来的にチアで得た経験を活かして、何かの役に立ちたい。可能性は色々あると思う。チアやダンスを教えたり、インストラクターの形で身体作りや健康維持のサポートなどもできる。スポーツマーケティングなども面白いかな、とも感じる。もちろん現在は、収入など生活的には厳しい状況。それらを考えると将来への不安が頭をよぎることも多い。でも今はチアのことに没頭しようと思っている」

 チアという華やかな表世界とは異なる、過酷な現実もある。不安を感じることは多々あるが、ジャガーズとしての一員というプライドのもと日々を走り続ける。

「チアも試合を盛り上げる役目を担っているけど、あくまで主役は選手。それを支える裏方というか、チームの一員としてサポートして一緒に戦っている感覚。それは監督、コーチ、その他、大勢のスタッフと同じ気持ち。実際、誰もがそういう形でチアのことも見てくれる。やりがいは最高にあります」

 ジャガーズの公式サイトに1枚の写真がある。ゴールポスト前で撮影されたチアの集合写真。後方のLEDリボンビジョンに、チア1人1人全員の名前と顔写真が映し出されている。ジャガーズに携わっている誰もが、『ザ・ロアー』をチームの一員、そして家族だと思っている証だ。

 本田景子は今日も最高のパフォーマンスでチームを支えている。まさにNFLにおけるメジャーリーガー、そこには国籍も年齢もない。(文・山岡則夫)

●プロフィール
山岡則夫
1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌『Ballpark Time!』を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、編集・製作するほか、多くの雑誌、書籍やホームページ等に寄稿している。Ballpark Time!オフィシャルページにて取材日記を不定期に更新中。現在の肩書きはスポーツスペクテイター。