■吉本芸人にはない魅力とは

 復帰がスムーズにいった理由は加藤自身の芸風によるところが大きいのかもしれない。

「復帰後、初のテレビ出演となった10月5日放送の『さんまのお笑い向上委員会』で加藤は、ムチャ振りを連発し他の芸人も滑らせる立ち振る舞いから『魔王』と呼ばれ重宝されていました。この日は、1か月ぶりに再会した息子の第一声が「あれ? お母さんは?」だったと、謹慎中のネタを挟みつつ、『失うものもない。あとは上がるだけ。俺は無敵だー!』と叫んで、番組を盛り上げていました。SNS上では『また大暴れしてくれ』『ハジけて良いんだよー』など、好意的な声も多く評判は上々でした。そんなある意味、芸風に破滅感が漂っているところも、ギャップが少なく復帰しやすかったのだと思います」(同)

 お笑い評論家のラリー遠田氏は、加藤の芸の真髄と今後の展望に関してこう語る。

「加藤さんは『カッチカチやぞ』などのギャグで注目されたイメージがありますが、ザブングルはもともとネタに定評があり、M-1グランプリで決勝に進んだこともある実力派でした。加藤さんの強みは『向上委員会』などのひな壇バラエティ番組で強引に前に出てくる度胸と、そこでスベっても負け顔を笑いにできる器の大きさと人柄の良さです。お笑い界で多数派を占める吉本芸人は、バラエティー番組でも普段の関係性を生かしてほかの芸人とスムーズに絡んだり、団体芸のようなやり取りをすることができます。でも、吉本以外でそれができる人はなかなかいません。そんな中で、加藤さんは貴重な存在。スベってもいいからとにかく前に出てやる、という気迫が感じられるので、周囲の芸人にも助けられ、結果的に面白くなったりします。吉本以外でこの“突破力”を持っている芸人は貴重なので、これからも活躍できるはずです」

事務所の対応が適切で、後押しをしてくれる芸人仲間も多そうな加藤。ゆえに、禊は済んだというムードが誰よりも漂っているのかもれない。(丸山ひろし)

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丸山ひろし

丸山ひろし

埼玉県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務し雑誌編集業務に従事。その後ライターに転身し、現在はウェブニュースや、エンタメ関連の記事を中心に執筆している。

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