澤村は阿部の引退でいま、心中穏やかではないはずだ (c)朝日新聞社
澤村は阿部の引退でいま、心中穏やかではないはずだ (c)朝日新聞社

 5年ぶりにセ・リーグ制覇を成し遂げた巨人。現役時代、そして指揮官としても巨人に栄光をもたらしてきた原監督が、第3政権1年目にして結果を残したことで高橋由伸時代の暗雲はあっさりと吹き飛んだ。

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 また長年、巨人を支えてきた阿部慎之助は今季限りでユニホームを脱ぐことになったものの、満身創痍で苦しいシーズンを過ごす中でも引退試合として臨んだ9月27日のDeNA戦では実に1580日以来となる本職の捕手を務め、さらにはアーチまでかける役者ぶりで自ら花道を飾った。

 ただ、その偉大な先輩の見事すぎる引き際に、心中穏やかでないのは澤村拓一だろう。

 大学時代にはメジャーも熱視線を送っていた澤村は2011年ドラフト1位で巨人に入団し、1年目から11勝を挙げる活躍で新人王を獲得。15年から転向したリリーフでも16年に37セーブで最多セーブを記録と、実力の高さは折り紙つきだ。

 しかし、華やかな活躍とともにグラウンド外でのトラブルでも、たびたび注目を集めてきた。女子アナとの結婚、そして早期離婚。数々の泥酔事件や、自慢のポルシェで駐車場を暴走して阪神のチームバスを煽った危険運転事件などスキャンダラスな話題をふりまいてきた。

「二軍生活が続いていた頃には、盛り場で酒に酔っている姿もたびたび目撃されています。周囲が動いてなんとか沈静化していますけど、感情の起伏が激しく、一度キレると大変なことになるという評判です。極めつけは球団トレーナーによる鍼治療時の施術ミス事件を大ごとにしてしまったこと。多くのトラブルは本人が結果を出せない不調時に起こっているため、同情の声は少なかったと聞きます」(巨人担当記者)

 身から出たさびと言えばそれまでだが、問題行動が多いために、チーム内でも孤立した状態だという。しかし、そんな澤村を常に気にかけていたのが阿部だった。

 阿部にとって澤村は中央大の直系の後輩ということもあり、チームで浮いていても常に目をかけてきた。12年日本シリーズでは不甲斐ない投球をする澤村の頭をマウンド上で引っ叩き、気合を入れるシーンもあった。引退試合でも、阿部がその場面をパロディにした演出でスタンドを沸かせるなど、澤村に対しては愛情を持って接してきた。

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阿部がいなくなったら…