調査員はまず、一人で来店しメモを隠れて取ることもある。なぜならば、訪問後には大量の調査レポートを作成する。全体会議で星を付けるかどうかの判断材料にするためだ。

 星を与えるかどうかの判断になった場合には、2名以上で複数回、店を訪れる。料理をコースやアラカルトなどで別々にオーダーし、同時にテーブルに提供されるか確認。料理の出来上がりから調理時間を逆算して取り掛かるのは、超高級店では当たり前だ。たとえ別々のメニューを注文していても、一人でもゲストを待たせることはありえない。

 また、料理についてサービス・スタッフに質問する。使用された食材だけでなく、シェフの食に対する哲学、そして料理に対する想い、客人に対するおもてなしなどをレストラン全体で共有しているかも確認事項だ。

 さらには、どのような陶器皿、ナイフ・フォークを使用しているかも確認する。そのためには、皿を裏返してブランド名を確認することさえある。

 ミシュランは料理が美味しいだけでは、星を与えてくれない。ミシュランガイド独自の5つの評価基準(素材の質、料理技術の高さ、独創性、価値に見合った価格、常に安定した料理全体の一貫性)で星を与えるかどうか、いくつ与えるのかを決めているのだ。その中に独創性という項目があり、王道を行くクラシカルな美味しいフレンチ・レストランだけでは星を獲得できない。

 星付けの基準は、1つ星はその分野で特に美味しい料理、2つ星は極めて美味であり遠回りをしてでも訪れる価値がある料理、3つ星はそれを味わうために旅行する価値がある卓越した料理だ。この表現は、もともとミシュランがタイヤ・メーカーであり、ガイドブックの創刊時に自動車による旅行が活発化することで、タイヤの売れ行きを向上させる狙いがあったことによる。

 いま現在、東京のフランス料理で3つ星は3店しかない(『ミシュランガイド東京2019』)。木村さん演じる天才シェフ、尾花は「グランメゾン東京」で3つ星を獲得できるのか? 独創性のある心揺さぶる創作メニューにも注目したい。

新山勝利(にいやま・しょうり)
研修セミナー講師、マーケティング・コンサルタント、大学講師。日本商業学会、日本マーケティング学会、日本プロモーショナル・マーケティング学会・正会員。顧客満足を高める売り場づくり、販売促進、店舗の活性化(ミステリー・ショッパー、マニュアル作成)のノウハウを提供する。メーカーのリテール・サポートにはじまり、全国の商工会議所など団体組織、広告代理店、卸売業、量販店、チェーン店等でコンサルティングを展開。また多数の専門誌に執筆。世界30カ国、150都市を歴訪。中でもフランス・パリには30回訪問。飲食店の経営経験もある。著書に『売れる商品陳列マニュアル』(日本能率協会マネジメントセンター)など。ホームページは http://www.ureru.jp/