■15歳からの訴え

 不登校が急増しながらも、受け入れ先が整備されない状況が続くなかで、私たちは何を考えればいいのか。

 先日、北海道から中学3年生で不登校(保健室登校中)をしている女の子から聞いた話が、私の胸にはとても突き刺さりました。

 彼女は小学生からいじめを受け、中学2年生の夏休み明けに教室にいられなくなりました。先生もいじめを解消してくれず、とりあえずと言われた保健室でずっとすごしています。この1年間、彼女は苦しんで、自分なりに戦った上で、以下のことを伝えたいそうです。

「先生からは『教室に入るのが当たり前だ』と言われてきました。不登校になってから一年間、ずっと『当たり前』や『ふつう』に苦しんできました。私のように『当たり前』ができない人もいます。そういう人のことをもっと知って考えてほしいと思っています」

 不登校は増えていますが、これは氷山の一角です。学校が苦しい人は、その何倍もいるでしょう。

 私たちが考えていくべきは、不登校の増加を危惧することではなく、不登校というかたちでも、本人が自分を責めずに生きていけることではないでしょうか。「ふつう」や「当たり前」を子どもに求めすぎて、苦しんでいる子が多すぎます。

 これから先、大事なことは学校にとらわれないで育つ道のりがどれだけ整備されるか、それが求められているのだと思えてなりません。(文/石井志昂)

著者プロフィールを見る
石井志昂

石井志昂

石井志昂(いしい・しこう)/1982年、東京都町田市出身。中学校受験を機に学校生活があわなくなり、教員や校則、いじめなどを理由に中学2年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」へ入会。19歳からNPO法人全国不登校新聞社が発行する『不登校新聞』のスタッフとなり、2006年から編集長。これまで、不登校の子どもや若者、識者など400人以上に取材してきた

石井志昂の記事一覧はこちら