これに対し、阪神サイドが「オリックスさん、どうぞというわけにはいきませんよ」(中村勝広監督)と強行突破を宣言すると、「このままでは行きたい球団に行けない可能性がある」と危惧した田口は会見を開き、「阪神は組織的にしっかりしていない。監督とフロントの間にゴタゴタがあったから」「将来的なことを考えると、あとまで面倒見てくれるかどうかも不安」「若手育成に一貫性がない」などと批判した。

「ウチの会社を批判するような選手を獲るべきではない」と阪神電鉄本社関係者をも激怒させた問題発言も、希望どおりオリックスに入団した田口が2度の優勝に貢献し、メジャー時代にもワールドシリーズ出場をはたしたことを考えると、結果オーライだったと言えるだろう。田口にフラれた阪神も、2位指名の遊撃手・久慈照嘉(日本石油)が翌年新人王獲得。“横柄発言”が期せずして2人の若者の運命を切り開いた。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2018」上・下巻(野球文明叢書)。

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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