実際、守備陣のバックアップメンバーが不調というわけではなかった。酒井宏樹に代わって後半12分から右サイドに入った安西幸輝は躍動感溢れるプレーを披露。強烈なミドルシュートを何本も放っていた。今季ポルトガルリーグ全試合出場という実績ある彼は十分に計算できる存在。長友か酒井に代えて頭から起用してもよかった。

 一方、今回出場機会はなかったものの、ベルギーで継続的にピッチに立っている植田直通も決して悪くない状態を維持している。6月のコパアメリカでも吉田の穴をしっかりと埋める働きを見せていて、今回も吉田か冨安に代えて先発させる選択肢も考えられた。オランダで恒常的に試合に出ている板倉滉らも含め、DF陣は誰を出してもいい状態なのだ。

 ここまでメンバーを固定しがちだった森保監督がモンゴル戦でようやく重い腰を上げてアタッカー陣の見直し、新たなバリエーション構築に着手したのだから、DF陣にも同時に手をつけてほしかった。それをやらなければ、真の意味での世代交代は進まない。今後の最終予選や本大会で長友も、吉田も、酒井も不在という苦境が起こらないとも限らないだけに、バックアップの強化は可及的速やかに取り組むべき課題と言っていい。

 2次予選で序盤2連勝という幸先のいいスタートを切った日本代表だが、全てが順風満帆とは言い切れない。次戦・タジキスタン戦は環境面も含めて非常にタフな戦いになる。どんな落とし穴が待っているか分からないだけに、酒井や冨安の穴を埋める存在の台頭が不可欠。今回こそ安西や植田らの活躍が必要だ。

 そして、攻撃陣も再び三銃士を先発に戻せばOKというわけではない。モンゴル戦で出番なしに終わった久保建英の起用法を含め、斬新なアイデアを打ち出してほしいところ。ここで一気にチームの幅を広げるような采配を森保監督に強く求めたいものだ。(文・元川悦子)