アメリカ疾病管理予防センター(CDC)では、今年の9月にHPVワクチン接種推奨に関して情報が更新されたばかりです。そこで、今回はHPVワクチンについて最近の報告なども含め、ご紹介したいと思います。

 HPVには100種類以上の型があり、がんの原因になる高リスク型は少なくとも13種類あります。このうち、HPV16型と18型の2種類が、子宮頸がんの原因の7割を占めています。HPV感染の多くは免疫力によって排除されますが、持続感染してしまうと前癌病変を経てがんになってしまいます。実は近年、子宮頸がんだけでなく、肛門がんや中咽頭がんなどもHPV感染が関連していることが明らかになっています。

 そんなHPVの感染を予防するのがHPVワクチンです。世界では、高リスク型である9つの型のHPV感染を抑える9価のガーダシル(ガーダシル9)が標準となっています。一方、日本では4価のガーダシルしか導入されていません。

 2019年8月、カナダのDrolet氏らが約6千万人を対象とした最大8年間のワクチン接種後の追跡調査を含む65件の研究を評価したところ、HPV感染した件数と前がん病変の発生件数が共に減少していたことがわかりました。

 さらに、2019年8月16日、CDCは米国の成人に対するHPVワクチン接種の推奨事項を以下のように更新しています。

「HPVに対する予防接種は、11歳または12歳のときに推奨されている。今回、11歳または12歳で予防接種を受けていない26歳までのすべての人も、HPVワクチン接種を推奨することを追加する」と。
 
 私の勤務先の新宿駅ナカクリニックであるナビタスクリニック新宿は、2017年12月からガーダシル9を海外から個人輸入し、希望者に対して接種を行っていますが、なんと希望者の多くは中国人です。2016年4月1日から2019年7月29日の期間中にナビタスクリニック新宿当院を受診しHPVワクチンを接種された方の性別や年齢、接種回数、HPVワクチンの種類、日本国籍以外の患者の在留目的を抽出したところ、判明しました。

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予防接種を望む中国人女性の背景