ここでは、グルメサイト「食べログ」を使って分析をしてみたい。マーケティング・コンサルタントにとっては、出店動向や味の流行などがわかるため、とても重宝する情報サイトだ。例えば、評価で3.50点(満足できる確率の高いお店)を目指すなら、そのカテゴリー上位を分析していけばいい。

「食べログ」でカフェ・喫茶のジャンルは、カフェ、喫茶店、コーヒー専門店、紅茶専門店、中国茶専門店、日本茶専門店、カフェ・喫茶(その他)の7項目に細分化している。今回はその中から、東京のコーヒー専門店(同専門店以外にも、複数のジャンルが重なる場合もある)に絞って分析を試みる。

 サイトを見ると、「コーヒー専門店」のランキング上位20店だけでも、「コーヒー“だけ”の専門店」は皆無という事実がわかる。多くの店でコーヒー以外にケーキやトーストなど、デザート類や軽食を出している。つまり、コーヒーだけを提供している専門店では、経営が成り立たないことを意味している。コーヒーではなく、食べ物で客単価を上げているのだ。

 提供される食べ物にも多くの工夫が見られる。チーズケーキは、実は他のケーキに比べて扱う店が多い。理由は賞味期限にある。もし苺のショートケーキならば2日程度。フルーツ類はドリップや酸化、変色で賞味期限が短い。

 ところが、ベイクドチーズケーキは焼き菓子であるため、約1週間程度はもつ。他にも、ゼラチンでツヤツヤにコーティングされたナパージュのケーキも、少しでも長く販売したい工夫の賜物なのだ。

 しかし、食べ物での工夫が必要なのにも関わらず、料理がまったくできない中高年齢者というのはことのほか多い。そのことを伝えると必ず反論されるのは、「自分はコーヒー専門店をオープンしたいのであって、別に料理の提供は考えていない」ということだ。

 これは蕎麦店にもいえることだ。かけ蕎麦やざる蕎麦だけを提供しているお店は、日本全国でどれだけあるだろうか。ほとんどが種物と呼ばれる天ぷらなどの具材をのせて提供しているはずだ。だからこそ、料理を作れないのは致命的なのだ。

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「サード・プレイス」の意味とは?