「不動産業というと、『騙される』『嘘をつかれる』『気に入ってもない部屋を契約させられる』といったネガティブなイメージを持つ人も少なくないと思います。実際、そうやってきた歴史があり、古い業界の体質ってなかなか変えられません。実は、僕も以前は、悪徳不動産に勤めていましたし、未だ闇は深いなと思います」

 そう語るのは、恵比寿にある完全紹介制の不動産賃貸業を営む、誠不動産の鈴木誠さんだ。不動産業界の契約させることしか考えていない不誠実なやり方に嫌気が差し、10年前に独立。「不動産業界に騙されずに、理想の部屋に引っ越す心構えや方法」をまとめた書籍『奇跡の不動産屋が教える 幸運が舞い込む「部屋探し」の秘密』(朝日新聞出版)は、不動産業界の闇を赤裸々につづりながら、本当に良い部屋に住むためにどう不動産屋と関わればいいのかを明確に伝え、話題となった。

「実は、僕と同じスタンスで不動産業界の闇に挑み、お客さまに正直で、素晴らしい部屋に出会うために邁進する不動産屋さんがいるんです。それが、『正直不動産』(小学館)という漫画に出てくる主人公です。この漫画、家を買う、売る予定がある人、家を貸す、賃貸物件を借りる、全ての人に読んでほしい秀逸な不動産実用漫画なんです」

『正直不動産』は、ビックコミックで連載中の漫画だ。いかに客を騙して儲けるかが重要な不動産業界にあって、嘘を厭わぬ口八丁で売り上げNO.1を叩き出していた凄腕営業マンの永瀬財地だが、ある出来事をきっかけに嘘がまったくつけない体質になってしまう。嘘がつけなくなった永瀬が、今度はすべてを正直に語ることで成功していく、そんなストーリーだ。不動産業界の闇を暴き、読者に見せつけてくるのだが、あまりにも嘘だらけの業界の裏側に面食らうほどだ。

●正直不動産は、正直、今の日本には稀有

「最初にこの漫画を読んだ時、『主人公は自分だ!』と思いました。そしたら『リアル正直不動産がいると聞いてきました』と、著者の夏原さんや脚本の水野さんが訪ねて来てくださったんです。取材をし、僕のリアルなエピソードを漫画にしてくださいました」と鈴木さん。

 この漫画の原作者は『クロサギ』や『伝説の頭 翔』でも知られる夏原武さん。世の中に潜む闇を暴き出す作品群の中でも、その取材力が光る作品になっている。6巻が8月30日に発売され、鈴木さんは帯に登場。「必ず役に立つ不動産裏参考書!」と太鼓判を押した。

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悪徳会社の手法で特にお客さまが引っかかりやすいのが…