北川悦吏子が明かす 鴻上尚史が見抜いた「半分、青い。」秘話
鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい『世間』を楽に生きる処方箋
朝日新聞出版の本
2019/10/08/ 16:00
鴻上さんが自分を向く時は遅い。ギリギリまで相談相手のことを考えているのではないか、と思う。舞台で役者を演出する時のように。さすが、大学時代から人の密度の濃い劇研を忌み嫌い、テニスラケット持って歩いてた私とは違う。人に揉まれてまみれてそれでも劇団をまとめて築き上げて、人間力が磨かれていったのだと思う。だから人の立場でものを考えられる。リアル想像力が半端ない。相談相手が目の前に見えているようだ。なんなら三日くらい相談相手と合宿した後のような理解だ。
そして、私は思い出すのである。数年前、私がふいの病で左耳を失聴した時、鴻上さんはかわいそうな私にこう言った。
「北川さん、またまた美味しいとこ持ってくねえ。何かそれで書くつもりでしょ」
その時、実は私はもう朝ドラ「半分、青い。」を書こうと決めていた。これ、ギリギリのセリフである。私だから怒らなくて、面白がって嬉しがる。鴻上さんは、いつだって相手を読んでいる。
※一冊の本 2019年10月号
鴻上尚史
鴻上尚史(こうかみ・しょうじ)/作家・演出家。1958年、愛媛県生まれ。早稲田大学卒。在学中に劇団「第三舞台」を旗揚げ。94年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞受賞、2010年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲賞。現在は、「KOKAMI@network」と「虚構の劇団」を中心に脚本、演出を手掛ける。近著に『「空気」を読んでも従わない~生き苦しさからラクになる 』(岩波ジュニア新書)、『ドン・キホーテ走る』(論創社)、また本連載を書籍にした『鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』がある。Twitter(@KOKAMIShoji)も随時更新中
鴻上尚史の記事一覧はこちら
鴻上尚史
鴻上尚史(こうかみ・しょうじ)/作家・演出家。1958年、愛媛県生まれ。早稲田大学卒。在学中に劇団「第三舞台」を旗揚げ。94年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞受賞、2010年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲賞。現在は、「KOKAMI@network」と「虚構の劇団」を中心に脚本、演出を手掛ける。近著に『「空気」を読んでも従わない~生き苦しさからラクになる 』(岩波ジュニア新書)、『ドン・キホーテ走る』(論創社)、また本連載を書籍にした『鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』がある。Twitter(@KOKAMIShoji)も随時更新中