数多くのCMの中で目立つには、ユーモアは非常に有効だ。だが、一方では「ギャグのためのギャグ」に走ってしまっている事例もしばしば見受けられる。視聴者は「笑えるけど、何のCMだっけ?」となりかねない。逆にきちんと商品特性を説明しても、視聴者にとって魅力的なニュースに変換されていなければ誰にも振り向かれず埋没する可能性が高い。いずれも効率を語る以前に広告としての効果を生んでいないケースだ。

 広告の効果を、企業が伝えたい情報を正しく表現できているかという視点だけで測るのは不十分だ。消費者に向けたコミュニケーション活動である以上、受け手がどのようにその情報を受け止めたかが最も重視されるべきであり、そこには“人の心”が介在する。

 広告の効果と効率を両立させるのであれば、マーケティング的に正しい手順を踏むことだけではなく、人の心や感情の領域を考えることを忘れてはいけない。

 情報環境がめまぐるしく変わり、時間に追われ生産性を追求する日々を送る現代人の心にとっては、フリクションのようなゆる~く笑えるCMが救いになったりするのではないだろうか。

●CM総合研究所/1984年設立。「好感は行動の前提」をテーマに、生活者の「好き」のメカニズム解明に挑戦し続けている。平成元年から毎月実施しているCM好感度調査をもとに、テレビCMを通じて消費者マインドの動きを観測・分析しているほか、広告主である企業へダイレクトにコンサルティングを行い、広告効果の最大化および経済活性化の一助となることを目指す。