パイロットコーポレーション「フリクション 居酒屋篇」
パイロットコーポレーション「フリクション 居酒屋篇」

 広告の一義的な目的は「商品やサービスの魅力を消費者に伝えること」だ。宣伝担当者には適正な(できれば少ない)コストでより大きな効果を生むことが求められる。特に近年は、楽観視できない景況に加え、さまざまなマーケティングデータを活用することが珍しくなくなり、よりシビアに効率を追う姿勢が見受けられる。そこで「効率の良い広告」とはどういったものなのか考えてみたい。

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「効率」とは、かけた労力に対する成果量の比率を指す。 「労力」は人的コストも含めさまざまであるが、ここではテレビCMの出稿にかかる金銭的なコストとする。 「成果」も売上やウェブサイトへの流入数、認知度など、キャンペーンの目的や商材ごとに異なるが、今回は当社データにおける一般消費者からの支持=「CM好感度」としたい。

 出稿量に対するCM好感度の獲得効率で見ると、安定して上位にランクインするブランドのひとつにパイロットの『フリクション』がある。ペンの後部に付いているラバーでこすることにより書かれた文字が消える筆記具シリーズで、学生のみならずビジネスパーソンの愛用者も多いヒット商品だ。

 2007年の発売当時オンエアされた最初のCMは、煙突の「煙」や電車内で大声で通話する乗客の「携帯電話」、ベビーカーの前の「階段」といった、ないといいなと思うものを相武紗季が商品を使って消してしまう内容。最後には日記の「失恋」という文字を「いい恋」と書き換え、商品特長を視覚的に印象づけた。09年にスタートした2作目もコンセプトとしては共通しており、ノートに書かれた「格差」や「後悔」「いじめ」といったネガティブな単語を次々と消していき、最後に「失望」を「希望」に書き換えるというポジティブなストーリーだ。視聴者からは「消せるボールペンがよく表現されている」「1本で書けて消せる。とても便利!!」といった感想が寄せられ、商品認知に加えて高い購買意向も獲得した。

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驚異的なCM好感度