今もスクワットは続けているし、たまにはダンベルを持つこともあるよ。行動範囲が狭くなりがちだから、意識的に歩く機会を増やすようにしている。自宅から駐車場までの距離が徒歩5分ほどかかるんだよね。それで外出するときに、娘は「私が車を回してあげるよ」っていうけど、女房は「歩こう!」のひと言だから。気遣いの仕方も真逆で面白いよ(笑)。

 最近ふと、引退について考えることがあるんだ。あと3年ぐらい早めていたら、今よりもっと元気な余生を過ごす天龍源一郎がいたのかなって。ちょっと現役に固執しすぎたかもしれない。ただ、その3年で得られた満足感と比較すると、果たしてどちらがよかったのか。最後の3年間をやり切って「悔いはない」と思えたこと、それでなんの未練もなく引退できたことは、俺にとっての財産でもあるからね。

 意外かもしれないけど、俺はトレッキングを使った散歩が好きでよく出かけるんだよ。ただね、引退してからは道中で出会うお年寄りを1人も追い抜けなくて。後ろから「いつものお婆さんが来たな」ってわかるんだけど、必ず追い抜かされるし、最近はどんどん離される(笑)。「あと3年早く引退していたら追い抜けたのに!」っていう悔しさと、「まだ俺は勝ち負けにこだわっているのか」なんてことを考えている自分がおかしくて、ニヤニヤ歩いてる。まあ、最近は腹も立たない代わりに、「やっぱり一人も抜けないのか」なんて、寂しさを存分に味わってるよ(笑)。

 食生活に気を配ることも、元気の秘訣だとはいうよね。俺の場合は食べ物が中心だけど、やっぱり年とともに好みも変わってくる。昔は甘いものが目の前にあればつい手を伸ばしていたけど、今は意識しなくても手が伸びない。必要なものっていうのは、そうやって取捨選択されていく。それで何が残ったかといえば、毎日欠かさずに飲んでいるビタミン剤(笑)。まだ「現役」にこだわっている俺がいるわけだ。

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力士のプライドはアメリカのトイレで捨てた