また、在宅医療の基本は、医師による「訪問診療」と「24時間365日対応の往診」です。訪問診療は症状の有無や程度にかかわらず、定期的におこなわれ、1回の診療時間は病院での診療に比べて長い傾向があります。なぜなら在宅医は、病気の状態を診察するだけではなく、患者や家族との会話を通じて、信頼関係を築き、希望や価値観を把握していく必要があるからです。

 医師が定期的かつ計画的に訪問して診療する「訪問診療」に対して、突発的な病状の変化などがあり、患者側が医師に要請して診療してもらうのが、「往診」です。症状が急変するなどの緊急事態には、在宅医が24時間365日対応するのが基本です。また、在宅医が専門分野の診察が必要と判断すれば、専門医に連絡をとって往診してもらうこともできます。

■在宅と入院を組み合わせることもできる

 不安の大きさは、健康なときと病気や障害があるときでは、異なります。また、自宅が持ち家か借り家か、何年暮らした自宅なのか、ペットも含めてどんな家族と暮らしていたのか、代えがたい思い出があるかなど、さまざまな要素によって思いは異なります。一方、病院も入院生活を快適に送るために、療養型の病院、緩和ケア病棟、リハビリテーション病院などで、落ち着いて過ごせるような工夫をしている施設もあります。

 在宅医療には覚悟が必要とはいえ、病状や本人の気持ち、家族の状況は変化していくものです。一度決めたからといって引き返せないわけではありません。基本的には在宅で過ごし一時的に入院する(右ページ「ときどき入院、ほぼ在宅」のイメージ図参照)、といった方法もあります。こうしたことも踏まえて検討することをおすすめします。

○監修
石垣泰則(いしがき・やすのり)/コーラルクリニック院長。日本在宅医療連合学会代表理事副会長。順天堂大学脳神経内科・リハビリテーション講座非常勤講師。

※週刊朝日ムック『さいごまで自宅で診てくれるいいお医者さん2020年版』から

(文・中寺暁子)