夏の運転は6月1日から9月23日まで、一部運休日を含んで109日間に1日2往復を運転した。残る年内は9月24日から10月14日までの21日間。1日1往復の運転となる。すでに記念企画として初日の出発式や、30周年にちなんで6・7・8月の30日に駅でのイベントやオリジナル乗車証明書の配布などが行われている。来年の運転日やイベントなどはまだ発表前のため、2020年春ごろのJR北海道HPで確認してほしい。

■復路の列車旅で味わう低湿原の風景

「くしろ湿原ノロッコ号」では、釧路発の往路の列車に乗って、釧路湿原駅で降りて展望台から湿原の風景を眺めたり、塘路駅まで乗って釧路川や塘路湖を散策したりするのが人気のコースだ。しかし今回は、客車側の運転席横から前面展望で湿原の風景をとことん楽しむため、塘路発の復路の列車に乗車した。

 夏には観光客でにぎわう塘路駅。ログキャビン風の小さな駅舎は喫茶店になっていて、出発までの時間を優雅に過ごすことができる。しばらく待つと釧路発の列車が機関車を先頭に塘路駅へと滑り込んでくる。列車の停車と同時に記念撮影タイムが始まる。列車を背景に降りた客と乗る客が入り乱れて次々と写真に納まってゆく。

 ホームが少し落ち着いたところで、予約しておいた塘路発の先頭車4号車に乗車した。外から見ても窓が大きいと感じたが、乗車してみると窓のサイズに改めて驚く。木のベンチシートとあいまって本当にトロッコのようだ。

 ゆっくりと走り出したノロッコ号は、後ろから機関車に押されるという、日本では珍しい感覚が体感できるが、速度が遅いせいかそれほど揺れは感じない。駅を出るとあっという間に車窓は緑一色の風景になり、右側に釧路川のおだやかな流れが見えてくる。釧路湿原クルーズの始まりだ。

 右から迫ってきた川は線路ぎりぎりを流れ、釧路川と線路がしばらく並ぶ。ここがベストビューポイントで、列車はゆっくり風景を楽しむために徐行するので、川の流れや対岸の植物までを眺めることができる。タイミングがよければ川下りのカヌーも見え、漕ぎ手と手を振り合うのも楽しい。

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ノロッコ号の真価を堪能