ホンダはそれ以外では、最新のスペック4を搭載する時も半分づつ入れ替えて様子を見るなど守りの姿勢を徹底している。今回のレースでもフェルスタッペンの「パワーをくれ」という無線に対してチームは「Negative」、ダメだよと即答。もっとパワーを出せるだろうが、一貫として信頼性を重視したPU戦略を採っている。

 思い返せば、マクラーレンと決別した時から、ホンダは非常に慎重に物事を進めている。ルノーとの関係が悪化したレッドブル陣営と1年の準備期間を作り、まずはトロロッソと協働を始めている。レッドブルもルノーとの決別は既定路線だったが、すぐには明確な答えを出さなかった。それぞれが得た教訓なのだろうか、一つ一つの決定を深く協議し、まずは信頼関係から構築しようという姿勢が見て取れる。

 ホンダファンはここ最近やきもきしているだろうが、慎重なPU戦略はホンダとレッドブル陣営との決定事項なのだろう。確かにホンダの戦略はスピード感に欠ける。しかし、レッドブル陣営もルノーと大喧嘩をした後で、フェラーリとメルセデスからPU供給を受けることもあり得ない。ホンダとレッドブル陣営は一蓮托生なのである。どうしても慎重にならざるを得ない材料が両方にあるのだ。

 今回のレースは非常に苦しい状況ながらも一定の成績を挙げることができた。シーズン戦略を徹底的に考え協議し、遂行し、一歩づつ進歩していく。レッドブル・ホンダがメルセデスより先にフィニッシュできたのはそれがあるからだ。

 ベルギーGPでスペック4を一部お披露目し、イタリアGPで全車に搭載し、シンガポールGPで多くのデータを得た。次のロシアGPではエクソンモービルの新しい燃料とオイルが導入される。そして迎えるのは日本GP・鈴鹿。一つ一つを紐解けば、今のホンダが何を狙っているのかはわかるだろう。(文・野村和司)