そもそも海外の企業がなぜ数字で管理され、日本企業がそうではないかというと、株式市場からのプレッシャーが少ないことが考えられます。

 持ち合いや物言わぬ株主が主流の日本では、業績についての株式市場からのプレッシャーが弱いのです。海外では数字を出さないと経営陣自体が入れ替えられてしまうので、自然と数字で全署にプレッシャーをかけることになります。

 また、海外では社員の多様性が高いため、同じ空気や同調圧力からの情実がそもそもあまりありません。

 一方日本ではぬくぬくと上層部にいるできない人が、できない人を集めて仲良くやっている事例が見受けられます。しかし、これからは日本株も海外勢に投資してもらわなくてなりませんし、日本株の大株主である年金基金等も、高齢化・少子化から高いリターンを企業に要求するようになるので、徐々にこのような人の居場所は少なくなるでしょう。

 加えて社員の多様性も増すでしょうし、いい人材をとって適材適所にしないとグローバル競争やテクノロジーの進化にキャッチアップできないので、その傾向もこういう人を駆逐していくでしょう。徐々にですが……。

 こんな生産性の低い人物を養っているために日本企業の賃金は低くなり、さらにこの人自信も飼い殺されていることになるので永久に進歩せず、会社から捨てられた時に路頭に迷うことになります。日本のこうしたシステムは全員にとって不幸をもたらします。

 では、このようなお役所仕事的な人物を動かすには、どうしたらいいのか。

 こういった人の動機の中に「会社のために実績を出す」という項目が入っていてくれれば、その人と合意点を見いだして一緒に巻き込むという方法はあるのですが……。どうもそうでもなさそうです。

 その場合、下からこうした人物を動かすのは難しいと心得ましょう。こういう人の動機付けが「波風立てずに無難に過ごす」「できるやつの芽を摘む」ということである場合が多いでしょうから。

 まずは、その人のライバルや上司を徐々に味方につけます。あるいは会社、特にあなたの部署が危機に陥るのを待って、その危機が来た瞬間を果敢に利用するのも手です。後はいい人材がどんどん抜けていくタイミングで、トップにプレッシャーをかけることも考えられます。

 そのときに備えて、そしてご自身の精神衛生のためにも、ご本人のモビリティ(転社能力)を高めておくことをおすすめします。実績や客観的に評価される能力を磨き、いざという時に「こんな人のもとでは働けない」と辞表を突きつけるのです。

 ただし、それ自体が会社にとって大きなプレッシャーになるくらいの人材になっておくことが大切です。

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田村耕太郎

田村耕太郎

田村 耕太郎(たむら・こうたろう)/国立シンガポール大学リー・クアンユー公共政策大学院兼任教授。ミルケン研究所シニアフェロー、インフォテリア(東証上場)取締役、データラマ社日本法人会長。日本にも二校ある世界最大のグローバル・インディアン・インターナショナル・スクールの顧問他、日、米、シンガポール、インド、香港等の企業のアドバイザーを務める。データ分析系を中心にシリコンバレーでエンジェル投資、中国のユニコーンベンチャーにも投資。元参議院議員。イェール大学大学院卒業。日本人政治家で初めてハーバードビジネススクールのケース(事例)の主人公となる。著書に『君は、こんなワクワクする世界を見ずに死ねるか!?』(マガジンハウス)、『野蛮人の読書術』(飛鳥新社)、『頭に来てもアホとは戦うな!』(朝日新聞出版)など多数

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