■パンツはついにNYコレクションの舞台へ

 アジアを中心に海外での売り上げは全体の約3割を占め、リピーターからの支持が厚い。毎週4種類ほどの新作デザインを発表し、一年間で200以上の新商品を供給しつづけている。そのぶん、一つあたりの商品は少ロット生産で、在庫は極めて少ない。小さい市場のなかで、多品種少量生産は、売れ残りを防ぐリスクマネジメントでもある。

 9月上旬に開かれたアメリカのNYコレクションでは、主会場の近くのアートスペースで新作100種をプレゼンした。

「急激に事業を拡大することで、品質のよさだったり、ひとつひとつ職人がつくるというこだわりは変えたくない。市場は大きくはありませんが、グローバルにニッチな市場のなかで、TOOTらしさを広めていきたいですね」

 果たして、このニッチな市場のどこに、勝機を見いだしたのか。

「私自身が初めて履いた時の衝撃と、このパンツを知らない人がまだまだたくさんいるということです」

 枡野さんは力強く答えた。
(AERA dot.編集部/井上啓太)