たとえば無死一、三塁の場面。そこで1点でも入ればチームにとってプラスになると思えば、ダブルプレー覚悟で迷いなくゴロを打ちに行く。併殺打の間に走者が生還しても打点は記録されないが、そんなことは関係なかった。引退会見で「打つだけじゃなくて、そういう意外と細かいことができたっていうのは誇りに思います」と胸を張ったのは、かつての“問題児"が献身的なプレーヤーに成長した証だった。

 2人には9月21日に神宮球場で行われる「引退試合」(中日戦)で、最後の舞台が用意されている。館山は現在通算998奪三振で「1000」の大台まであと2つに迫っているが、この記録には「まったく興味がないんですよね」という。

「やっぱり全力で投げてきた積み重ねなので……。(1000奪三振は)普通の選手にしたらただの通過点かもしれませんし、それよりも全力で一軍でも二軍でもアウトを取りに行ったっていうのが、自分の誇れるところなので」

 たとえ「引退試合」であってもお茶を濁すような真似はしないし、相手の打者にもしてほしくない。これまでと同様、最後まで打者を打ち取るために全力で腕を振るつもりだ。

 畠山のほうは、まだ自分が二軍にいた頃に華やかなスポットライトを浴びながらユニフォームを脱いでいった先輩の姿に、自らを重ね合わせている。

「池山さんじゃないですけど、とにかく全力で(バットを)振って敗れ去りたいと思ってます、気持ちは」

 球団史上最多の通算304本塁打を放ち、2002年の現役最終打席ではすべてフルスイングの空振り三振で19年間の選手生活にピリオドを打った池山隆寛。“ブンブン丸”の異名を取った偉大な先輩のように、畠山も最後は“魂のフルスイング”で、16年の現役生活を締めくくるのだろう。

 ヤクルト一筋に、長きにわたってファンを魅了してきた館山と畠山──。2人の引退は寂しいというほかないが、明日21日はそのラストステージをしっかりと見届けたい。(文・菊田康彦)