我が鴨川市長と市役所がどうしているのかはさっぱり伝わってこなかったが、千葉市の谷俊人市長はすぐに災害対策本部を立ち上げ、避難所や区役所などによる支援体制や、公共施設の浴場の無料開放などを分かりやすく市民に伝えると共に、県が現場に足を運んで実情を把握しようとしていないこと、東電がいい加減な楽観的復旧見通しを発表して被災者を惑わせていることを厳しく指摘した。

 千葉県が災害救助法を県内41市町村に適用して、避難所の設置や食料などの配布の経費を国と県が負担することにしたのは12日で、しかもその際の認識は「12日午後4時現在の避難者は845人で前日より65人減」というものだった。そうじゃないんですよ、電気も水も来ず電話も通じず、場合によっては屋根瓦も飛んでブルーシートをかけてでも自宅で頑張っている自宅避難民が、我が家を含めて何十万世帯もいるんですね。

 そういうことが少しは分かったのかどうか、安倍晋三首相がこの対策に全力を挙げるよう指示し、経済産業省が「停電被害対策本部」を立ち上げたのは13日になってからだった。

■東京電力の責任は重大

 停電の深刻さと復旧の遅れについては東京電力による人災の側面が大きい。

 日本経済新聞が12日付以降、繰り返し指摘しているところでは、「原発事故で経営が厳しくなった東電が送電関連の設備投資を抑え」てきた。1991年には送配電設備に約9000億円を投じていたが、15年には何と8割減の約2000億円に止まっている。そもそも電柱や鉄塔は風速40メートルに耐えうるようにしか設計されておらず、しかも多くは1970年代に建てられ、その初期のものは耐用年限に近づいているにもかかわらず、逆に「耐久性があると判断した電柱への投資を先延ばししてやりくり」してきた経営怠惰のツケが顧客に回された格好である。

 この「風速40メートルに耐える」というのは経済産業省の省令で決まっているのだそうで、これは台風の凶暴化に合わせて見直しが必要だろう。またこれを機に、他の先進国に比べて極度に遅れている電線の地中化の議論も高まるだろう。

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携帯電波が届かないことで起きた悲劇