高校総体が危機に瀕しているだけでなく、東京五輪・パラ開催をバッティングする大規模イベントは少なからず影響が出るだろう。夏休み時期には花火大会や祭り、音楽フェスなどが関東エリアでも多数行われるが、宿泊施設や交通アクセス、警備などの観点から、こちらも時期の変更や中止を余儀なくされるかもしれない。

 もちろん、その場合も金銭的補償はほぼないだろう。東京五輪・パラまで1年を切り、華やかな部分ばかりがクローズアップされがちだが、一方ではマイナス影響を被る人たちもいる。それも再認識しなければならないことではないか。

 高校総体に関しては、「仮にクラウドファンディングや基金が集まらず、開催経費が足りなくなった場合でも、中止はしない。それが我々のスタンスです」と奈良専務理事は強調する。公益財団法人である全国高体連が保有する基本財産の一部を切り崩して不足分の経費に回してでも、高校生たちの夢だけは失わせないという強い意思が彼らにはあるのだ。

 全国の部活動に携わる選手たちにとって、高校総体が一大目標であるのは紛れもない事実。春夏の甲子園がある野球、冬の高校選手権があるサッカーなどはそちらの方が重要度が高いかもしれないが、大半の高校アスリートにとって高校総体は最大のターゲットであり、憧れの場だ。

 登山や少林寺拳法、空手道といったマイナースポーツ競技者にしてみれば、全国の大舞台に立てるチャンスというと本当にこれくらい。開会式に皇室が臨席するのを踏まえても、大会の意味合いは非常に大きいのだ。

 奈良専務理事も「全国の部活動に携わっている選手は120万人います。高校総体に出るのはその2.4~2.5%ですが、予選にはほぼ全てのチームが参加する。サッカーも地方予選から参加するのは全国4000校に上ります。日々練習に励む高校生のためにも絶対に中止はしない。何とか全競技を行うために努力を続けていきます」と語る、全国高体連側の切なる思いは届くのか。五輪・パラ関係者はもちろんのこと、1人でも国民にこの問題に関心を抱いてもらい、資金協力をしてほしいものだ。(文・元川悦子)