「それを受けて、北関東4県に再度『30競技を何とかできないか』とお願いし、東京五輪とパラリンピックの間に当たる8月10~24日に日程をズラしたうえで、11競技だけは残せましたが、それ以外は全国に分散しなければいけなくなった。


 その後4~5年間かけて調整を続け、全競技実施のメドは立ったのですが、開催経費の方が依然として厳しい状況です。各自治体もイレギュラーなスポーツ大会に潤沢な予算はつけられない。こちらも経費圧縮を重ねてきましたが、現時点では不足分が出てしまう状況なのです」(奈良専務理事)

 これまでの高校総体では、1競技平均4500~5000万円、30競技全体で15億円近い費用が計上されてきた。サッカーのような大規模競技になると、今年の南部九州総体でも8000万円はかかったという。

 高体連サッカー専門部の林義規部長も「会場費や宿泊費、審判の経費、暑熱対策費用などかなりの負担がかかります。2020年の群馬開催も同規模を見込んでいて、群馬県と前橋市に費用の8割を負担していただけることが決まっています」と安堵感をにじませる。

 だが、静岡県開催となった陸上、石川県開催のバスケットボール、山形県開催の体操などはそういうわけにはいかない。「最低限の規模でやらざるを得ない」と奈良専務理事も神妙な面持ちで言う。

 東京五輪・パラ開催のために高校総体が危機に瀕しているのに、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会や東京都からの金銭的補償は皆無だという。

 今回のケースは、道路拡張のために立ち退かざるを得なくなった住民が自治体から補償金を支払ってもらう例に近い。組織委員会からも何らかのサポートがあっていいはずだ。が、「国家的事業」という名目の下、全国高体連や高校スポーツ関係者は一方的に協力を求められているのが実情のようだ。いくら国を挙げての五輪・パラが開催されると言っても、この現状はどうしても理不尽に映る。

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必要とされる資金協力