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顔の半分が麻痺(まひ)! 現役医師が顔面神経麻痺を経験して初めてわかった「患者さんの気持ち」

連載「現役皮膚科医がつづる “患者さんと一緒に考えたいこと、伝えたいこと”」

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大塚篤司dot.#ヘルス
大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医

※写真はイメージです(写真/Getty Images)

※写真はイメージです(写真/Getty Images)

 自分を客観的に見るのは、とてもむずかしいことです。自信を持っていることが間違っていたり、ただの勘違いということはこれまでの人生を振り返るといくらでもあります。うぬぼれという勘違いは、気がつくまで時間がかかります。

 勘違いに気がつくのに私は自らの経験が必要でした。

 当事者になってはじめて「自分は勘違いしていた」と気がつきました。

 私は、麻痺が出た顔面を鏡で見ながらわかりました。

「私はなにもわかっていない」

 元の顔に戻らないかもしれないという不安を抱えながらの生活。

 麻痺を隠すつもりでマスクをすれば「風邪?」と聞かれます。何度も何度も同じことを聞かれ、正直「ほっといてほしい」と思いました。

 周りからみたらとてもささいなことに映ったのかもしれません。「患者さんの気持ちがわかるようになってよかったね」と安易な言葉をぶつけられたときにはとても腹がたちました。

 幸いなことに私の顔面神経麻痺は1カ月後に後遺症を残すことなく治癒しました。それでも、顔に麻痺を抱えたままの生活の苦しさは、今でもしっかりと覚えています。

 病気を知っているのと、病気にかかるのとでは全く違います。病気にかかる前には想像していなかった自分の心の動きに驚きました。

 私がわかっていたのは、患者さんの気持ちではありませんでした。物心ついたときから病気をしていた「自分の心」だけでした。

 どんな言葉に自分が傷つくのか、私自身がわかっていなかったと思います。

 病気の苦しみは人それぞれです。その人しかわからない苦しみがあります。

 私はラムゼイ・ハント症候群にかかって、これまでの医者人生を振り返りました。忙しさを言い訳にして深く考えず、なんでもわかっているような振る舞いをしていたのではないだろうか。

 簡単に「気持ちがわかる」と言ってしまう私はただ単に、わかっていないことがわかっていないだけでした。

 患者さんは嘘の言葉を簡単に見抜きます。

 身近な人が病気にかかったとき、大事なことは「気持ちをわかったふりして自ら語る」ことではなく「わからない気持ちを理解しようと相手の話を聞く」ことなんだと思います。


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大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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