実質の戦力外通告を受けた阪神・鳥谷敬の動向が注目されている。9月初旬のマツダスタジアムでは敵地にもかかわらず、グラウンドに姿を現わすだけで場内から大声援が送られた。
鳥谷本人は現役続行の意思が固いとみられる。しかしプロの世界は実力がすべて。結果を出せない状況ならばユニフォームを脱ぐのが当然である。
しかし高い技術力があれば多少の体力的衰えはカバーできる。巨人・阿部慎之助などは天才的な打撃と『実績』というブランド力で好調なチームを後方支援している。
では鳥谷はどうなのだろうか。以前、本人が語ってくれたインタビューをもとに、阪神OBの野球解説者・田尾安志氏に聞いた。鳥谷敬の打撃はまだ通用するのか……。
「もともと投手よりの右ヒジが伸びた状態でスイングする。投手よりの右腕を意識した打撃スタイル」と鳥谷の打撃を評する田尾氏。
打者の手元で動く球が全盛になってからは、「引きつけて見極めて打つ」スタイルが主流になった。しかしその中で右手主導の打撃を貫く鳥谷は以下のように語っていた。
「大学時代からですが捕手よりの左腕が内側に入るクセがある。当然、右肩も入ってしまうために投手を真っ直ぐのラインで見ることができない。それを修正するために最初はオープンスタンスから始めた」
「打撃で重要視しているのは、投球を線でとらえること。それに対してバットを正確に出せないと打ち返せない。そのために相手投手や状況、自分のコンディションに応じて身体の開き方などを微調整している」
調子が良い時は、ショートの頭から左中間への鋭い打球が飛ぶ時だ。これも右腕主導の打撃スタイルが生み出している。
これに対し、「スイング時にインコースは詰まってしまう。インコースを身体の鋭い回転でライト方向へ打つのは苦手なタイプ。逆にショートの頭から左中間へ打つのがうまい。バットが身体の近くを通っているから」と田尾氏は分析する。