頼みの綱だった指揮官も去り、最後は跪いての必死のアピールも却下され、結局、打ち直しとなった杉谷は、カウント2-1から右翼上空に高々と飛球を打ち上げた。ライト・清田育宏が両手を上げ、捕球の構えを見せたが、ここから“世にも不思議な物語”が幕を開ける。なんと、薄暮の中で、清田は打球を見失ってしまい、後方にポトリと落ちるラッキーな三塁打となったのだ。

 この一打が呼び水となり、直後、レアードが試合を決める右越え2ラン。エース・大谷翔平ロッテ打線を3安打完封し、7対0と完勝した。

 結果的に死球で一塁に出るよりずっとおいしい思いをした杉谷は「神様が見てくれていたんだな、と思いました」と喜色満面だった。

 昨年5月12日のソフトバンク戦(ヤフオクドーム)では、2打席連続死球を受けたが、2度目は「当たってたよ!」と何度もアピールした末に、リプレー検証でボールから死球に判定が覆るという、これまた杉谷ならではの珍死球。くしくも相手ベンチにいた“元祖”達川ヘッドコーチをも苦笑させている。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2018」上・下巻(野球文明叢書)。

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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