南野にしても所属クラブでは2トップから左右の両サイドまで幅広くこなしているし、中島も堂安も2列目ならどのポジションでもある程度はやれる。原口も今季ハノーファーでは半分以上ボランチに入っているし、昨季は右サイドバックを担ったこともあった。

「幅を広げるのが必ずしもいいことではない」と原口は苦笑していたが、監督の指示をある程度、受け入れてチームの駒として献身的に働けるのが、今の30代以下のアタッカーの特徴と言える。スペシャリストが目に見えて減少している現代サッカーにあって、トップ下を主戦場としている香川、サイドアタッカーの乾というのは使いづらい人材かもしれない。

 とはいえ、まだ予選は始まったばかり。10月のモンゴル・タジキスタン2連戦、11月のキルギス戦と森保ジャパンの戦いは続いていく。その中でまだ代表通算5ゴールの中島、7ゴールの南野、3ゴールの堂安の三銃士がコンスタントに得点を奪い続けられるという保証はない。

 久保にしても、レンタル移籍したマジョルカで定位置を得らなければ代表招集自体も危うくなるし、伊東も今月から挑むUEFAチャンピオンズリーグで点を取って代表ポジション争いに弾みをつけられるどうか未知数だ。彼らがすんなり成長してくれれば、森保監督が強力に推進しようとしている若返りは一気に進むだろうが、そうでない場合は再び香川や乾、岡崎の必要性が叫ばれる可能性もゼロではない。

 もちろん、そのためには30代アタッカーの際立った活躍が必要だが、今季の香川の輝きを見ていれば、あり得ないことではない気がしてくる。代表キャリア12年で通算31得点というのはやはり偉大な数字。若い世代はその領域を超えるべく、ミャンマー戦で披露した得点に絡む仕事を増やし、予選を通してゴールラッシュを見せることが肝要だ。

 今、まさに大きな分岐点に立たされている日本代表。攻撃陣の世代交代が一段と加速するのか否か。最終的に生き残るのは若手か、ベテランか。ここからのサバイバル競争から目が離せない。(文・元川悦子)