ヤクルト・バレンティン(C)朝日新聞社
ヤクルト・バレンティン
(C)朝日新聞社

 ポッキリと折れて三塁方向に飛んでいくバットのことなどお構いなしに、バックスクリーンに吸い込まれる打球を目で追いながら、8年前の光景を思い出していた。

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 2011年5月13日の横浜(現DeNA)戦。当時、来日1年目の26歳だったウラディミール・バレンティンは、須田幸太(現JFE東日本)のスライダーにバットを折られながらも、打球を横浜スタジアムのレフトスタンドに運んだ。根元から折れたバットがガシャンという大きな音を立てながら目の前のバックネットにぶつかる間に、高々と舞い上がった打球が大歓声に沸くスタンドに消えていったのを、今でもハッキリと覚えている。

 あれから8年。7月で35歳になったバレンティンは、9月6日の巨人戦(神宮)で今度はバットを折りながらセンターに今季30号を叩き込み「(バットを折って)バックスクリーンは初めてだよ」と笑った。

 これで外国人選手としては史上最多の8度目のシーズン30本塁打以上となり、同時に日米通算300号に到達。「毎年30本打つというのが自分の目標でもあったので、とても嬉しい。(日米通算300号は)自分自身を誇りに思うし、達成感でいっぱいだけど、残り試合でもっと打てるように頑張る」と話した。

 バレンティンにとって、今年はいろんな意味で節目のシーズンになっている。6月には自宅のある米国で待望の長男が誕生し、一時チームを離れてこれに立ち会った。8月24日の阪神戦(神宮)では、ヤクルトの外国人選手では初めて通算1000試合出場を記録。8月28日のDeNA戦(横浜)で来日以来の通算本塁打を284本として、歴代の外国人ではタフィー・ローズ(通算464本、元近鉄ほか)、アレックス・ラミレス(通算380本、元ヤクルトほか、現DeNA監督)、アレックス・カブレラ(通算357本、元西武ほか)に次いで単独4位に浮上した。

 そのバレンティンがしんみりとした口調で語り出したのは、小川淳司監督の今季限りでの退任が報じられた9月8日のこと。小川監督との思い出を聞くと、返ってきたのは少し意外な答えだった。

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バレンティンが小川監督に感謝するワケ