中田のチャンネルでは、憲法改正問題、原発問題、日韓関係の問題など、論争の火種となっているような扱いの難しい問題がしばしば取り上げられている。こういうものを扱うときの中田の語り口は絶妙だ。思想的に偏らず、歴史を紐解き、論点を分かりやすく整理する。それを踏まえて、どう考えるかは見ている側に委ねる、というスタンスだ。デリケートな社会問題をこういうふうに語れる人はめったにいない。

　率直に言って、私は芸能人のコメンテーターが社会問題についてテレビで語っているのを見ても、満足できないことが多い。一般に、専門的な知識の足りない人が論争の火種となるような難しい問題について何か語ろうとすると、分かりやすい偏った感情的な意見を述べるか、取るに足りない無難な意見を述べるかの二択になってしまう。個人的にはそのどちらも物足りなく感じられる。

　だが、中田はYouTubeでそのどちらでもないことをやっている。じっくり勉強をした上で、学んだ内容を整理して語っている。その分野に詳しくない人にとってはためになるし、詳しい人が見ても新しい発見がある。内容面でも形式面でも、とてつもなく高度なことをやっていると思う。

　こういった学習系のコンテンツというのは、大人が見たいものであると同時に、親が子供に見せたいものでもある。その意味ではターゲットになる層は幅広いので、コンテンツとしての可能性はまだまだ広がっていく一方だろう。

　中田は「しくじり先生 俺みたいになるな！！」（テレビ朝日系）でプレゼン芸の才能を開花させ、番組内でいくつかのテーマで講義を行った。ここから発展して「中田歴史塾」という中田メインの特番も放送された。だが、特番では十分な視聴率を獲得することができず、挑戦は失敗に終わっていた。中田にとって、YouTubeの活動はそのリベンジマッチなのだ。

　中田は何度でも立ち上がる。有り余る才能と情熱によって、これからも世間をあっと言わせるヒット作を量産していくだろう。（ラリー遠田）

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田（らりー・とおだ）／作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』（白泉社）の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』（ディスカヴァー携書）、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり＜ポスト平成＞のテレビバラエティ論』 （イースト新書）など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』（光文社新書）。http://owa-writer.com/

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