宇野昌磨 (c)朝日新聞社
宇野昌磨 (c)朝日新聞社

 エキシビションから競技用に作り直した宇野の今季ショートプログラム『Great Spirit』は、曲を通して激しいビートが響き続けるナンバーだ。「僕にとっては初めて、スタートから最後までずっと動きっぱなしのプログラム」と宇野が言うように、試合でも新しい宇野を見せてくれるだろう。

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 8月29日、横浜で行われたアイスショー「フレンズオンアイス2019」の公開リハーサルで、宇野は競技用プログラムとしては初披露となる『Great Spirit』を滑った。羽生結弦やネイサン・チェンのプログラムも手がけるシェイ=リーン・ボーンが振り付けたこのナンバーは、昨季のエキシビションでも宇野の今までにないワイルドな魅力を強烈に印象づけている。だがシニアデビューしてから昨季まで、宇野の試合のプログラムは幼い頃から師事する樋口美穂子コーチが振り付けており、挑戦的な『Great Spirit』はあくまでもエキシビションナンバーだった。しかし宇野はこのシーズンオフに、山田満知子コーチ・樋口コーチの下で一からスケートを学んだグランプリ東海を卒業、しばらくはメインコーチをおかないことを明らかにしている。異色のエキシビションナンバーをショートに作りかえる決断は、“新たなスケートを手に入れる”という宇野の決意表明とも受け取れる。宇野にとって滑りやすいプログラムを作ってくれる樋口コーチの振付で世界トップクラスのスケーターになった宇野は、これからは新しい振付師が引き出す魅力を発揮することで、さらなる高みを目指そうとしている。

 上半身は鮮やかな色、下半身は黒の衣装でリンクに立った宇野は、激しい曲調に全身で乗っていた。宇野の氷に吸い付くような重みのあるスケーティングがダンスミュージックの中で生きる、シェイ=リーン・ボーンが得意なアップテンポのプログラムだ。「つい先日作り直しました」というこの新たなプログラムについて、宇野は「より凝縮されて、とても体力的に辛いところはある」と語る。

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表現に強いこだわりがある宇野昌磨