打撃も右方向へおっつけるようなバッティングのイメージが強かったが、4回には宮城の144キロの高めのストレートを振りぬいてレフトスタンドへ運ぶ一発を見せて、長打力があるところも見せた。捕手不足に悩む球団は是が非でもほしい選手である。

 同じ捕手の佐藤都志也(東洋大)はファーストで出場したが、バッティングと走塁で見せた。4回に宮城の145キロの低めのストレートをライト前に弾き返し、一気に二塁を狙って結果はアウトになったものの、この時のセカンド到達タイムは7.53秒をマーク。これはプロでもなかなか見られない数字である。左投手を苦にしない高いバッティング技術と運動能力を生かすために、外野手として見ている球団も多いはずだ。

 投手は下級生が多く、今年ドラフト対象となる4年生は森下暢仁(明治大)と吉田大喜(日本体育大)の二人だけだったが、ともに貫禄のピッチングを見せた。森下は2回に味方のエラーで1点は失ったものの(自責点は0)、ほとんどストレートとカーブだけでヒットは石川のテキサスヒット1本に抑え込んだ。高い位置から投げ下ろすボールの角度はさすがで、コーナーに投げ分ける制球力も高レベル。秋のリーグ戦に向けて調整段階のこの時期でも唸らされるピッチングだった。

 吉田は8回に登板して打者3人を完璧に抑え込んだ。投じた13球のうち11球がストレートで、4球が150キロ以上をマーク。大学の先輩である松本航(西武)に雰囲気の似たゆったりとしたフォームで、数字に見合うボールの威力がある。先発、リリーフどちらもこなせる器用さもあるだけに、プロは非常に指名しやすい投手と言えるだろう。

 試合結果は5対5の引き分けでそれなりに点は入ったものの、高校日本代表は16三振、大学日本代表は12三振を奪ったように全体的には投手が目立つ試合だった。そんな中でも別格のスケールを見せた佐々木を含め、ここで取り上げた選手は全員が上位指名の可能性も十分に考えられる。10月のドラフト会議に向けて高校日本代表はこの後のU18ワールドカップ、大学日本代表は秋のリーグ戦では学生生活の集大成となる活躍を見せてくれることを期待したい。

●プロフィール
西尾典文
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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