「秘境駅フェスタ2017」では、国鉄(現・JR)時代をしのばせる糠南駅の硬券入場券を発売し、1971年に廃止された町営簡易軌道(開拓者の利便を図るために敷設された小規模な鉄道路線)や炭鉱跡を訪ねるツアーも開催。こうした秘境駅関連イベントはすっかり定着した。

 2018年8月4・5日には、宗谷本線の普通列車に解体・持参した自転車を積み込む「輪行(りんこう)」によるサイクリングで、町内の秘境駅を巡る「チャリ・デ・秘境駅」を開催。フェスタは同月11・12日に「ほろのべ名林(めいりん)公園まつり」と共催とされ、秘境駅関連イベントが2週続いた夏休みとなった。

 19年も8月10・11日に「第49回ほろのべ名林公園まつり&秘境駅フェスタ」として開催した。会場内に秘境駅ブースを設け、ともに鉄道ファンとして知られる、お笑い芸人グループ「ななめ45゜」の岡安章介さんとフリーアナウンサーの久野知美さんが参加。岡安さん・久野さんによるトークショーや、秘境駅バスツアーが実施された。冬の糠南駅でのクリスマスパーティーも定着している。

■トナカイに会える観光施設も活躍

 秘境駅以外にも、町内には「幌延町トナカイ観光牧場」や、サロベツ原野のただ中にある「幌延ビジターセンター」など、いくつもの魅力的な観光スポットが点在している。

 幌延町トナカイ観光牧場は、サンタクロースのソリの引き役として人気のトナカイを50頭飼育する、日本で唯一のトナカイ観光牧場。牧場のトナカイは人間によく慣れていて、手のひらに餌を載せると寄ってきて、間近で観察できる。牧場のトナカイが、秘境駅関連のイベント現場に登場することもしばしば。

 幌延ビジターセンターは、ラムサール条約湿地・下サロベツ原野園地の南端に建ち、サロベツ原野に生息する動植物を紹介しており、高さ25mの監視塔からの大湿原や日本海に浮かぶ利尻富士(利尻山=標高1721m)の眺望が抜群。館内では域内に生息する希少な動植物についての解説もなされる。

 秘境駅巡りに加え、町内の宿泊施設に長く滞在してそれらの観光スポットや飲食店などを訪ね、地元の人たちとのふれあいを楽しむ来訪者も増えた。

 幌延町は幌延駅舎内に18年、幌延町移住情報PR支援センター「ホロカル」をオープン。観光案内やレンタサイクル、「秘境駅携帯クリーナー下沼・南幌延編(各400円)」やトナカイグッズなどの販売を行っている。併設のカフェでは、幌延町の出身者が経営する札幌市の著名なコーヒー店の豆を使ったコーヒーや、町内で人気のパン店「レイポモトントゥ」のラスクも味わえる。

 今後の計画について幌延町は、「広域的に沿線自治体が連携しながら取り組める事業を進め、道北地域を魅力あるスポットとしたい」と話す。同時に「秘境駅を守ることが宗谷北線(名寄~幌延~稚内間)全体を守っていくことにつながる」としている。(文/武田元秀)