※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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岩手医科大学病院耳鼻咽喉科教授の佐藤宏昭医師
岩手医科大学病院耳鼻咽喉科教授の佐藤宏昭医師

 今年の夏もフジロック(FUJI ROCK FESTIVAL)、ロッキン(ROCK IN JAPAN FESTIVAL)、サマソニ(SUMMER SONIC)などをはじめ、たくさんの野外フェスがおこなわれました。近年はCDなどの音源の売り上げが下がる一方、ストリーミング配信やライブでの売り上げが伸びているという調査もあります。

 盛り上がりが加速するスマートフォンやライブでの音楽体験。実は、こうしたスタイルの音楽聴取が若者の耳に少なからず影響を及ぼしていることをご存じでしょうか? 耳の疑問について、岩手医科大学病院耳鼻咽喉科教授の佐藤宏昭医師に聞きました。週刊朝日ムック『「よく聞こえない」ときの耳の本[2020年版]』からお届けします。

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Q 大音量ライブやスマホで若者の難聴は増えている?

A 若者の半数に難聴リスク セルフチェックで早期発見を

 若者の大音量ライブへの参加や、携帯音楽プレーヤーやスマートフォンによる長時間、大音量での習慣的な音楽聴取は難聴のリスクとして現在、世界的に問題になっています。世界保健機関(WHO)は世界の12~35歳人口の約半数にあたる11億人に難聴リスクがあると指摘しています。2017年にドイツで14~15歳の生徒2143人を対象におこなわれた調査でも、85%が携帯音楽プレーヤーで習慣的に音楽を聴取しており、全生徒の2.3%に騒音性難聴の所見がみられました。

 WHOでは聴力スクリーニング検査を推奨しており、聞こえのセルフチェックができるアプリ「hearWHO」(英語版)を提供しています。セルフチェックをして心配なことがあれば医師に相談しましょう。

Q イヤホンでの音楽聴取はどの程度で難聴リスクになる?

A 難聴リスクを避けるには80dB 週40時間を限度に

 携帯音楽プレーヤーからイヤホンで音楽聴取する際に、難聴リスクを避け、安全に使用するためには、大人は80dBの音量(走行中の電車内の騒音と同程度)で1週間に40時間、子どもは75dBで1週間に40時間が限度とされています(WHO基準)。工事現場など騒音性の職場の難聴予防の基準でも、各国のガイドラインはおおむね85dBで1週間に40時間までに設定されています。

 いまのところ85dB以下の慢性騒音下で騒音性難聴をきたしたという研究報告は少なく、80dB未満の騒音では一般的に騒音性難聴をきたす恐れはないとされているため、より安全な75dBという音量は子どもの難聴予防にも望ましいでしょう。音楽聴取では適度な音量や時間を守り、予防可能な難聴を防ぎましょう。

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