米国疾病管理予防センター(CDC)のSkoff氏らの報告によると、2006―2013年のデータを調査したところ、百日咳の乳児の44%で感染源が同定され、感染源として多かったのは兄弟姉妹(36%)と最多であり、ついで母親(21%)、父親(10%)だったことが分かりました。また、2006~2007年は母親が主な感染源だったが、2008年には兄弟姉妹が感染源である割合が上回っていたというのです。

 さらに、海外の一部の国では、ワクチン未接種により百日咳に感染し重症化するリスクの最も高い生後まもない赤ちゃんを守るために、妊婦さんや乳児の世話をする機会がある成人、さらには医療従事者へのTdap接種が推奨され, 実施されています。

 英国では、2012年10月に妊婦さんに対する百日咳ワクチン接種プログラムが導入されました。Amirthalingam氏らの調査によると、出産前の平均ワクチン接種率は64%であり、3カ月未満の乳児で確認されたワクチンの有効性は91%、2カ月未満の小児でのワクチンの有効性は90%だったといいます。
 
 ちなみに、妊娠27~30週での破傷風/ジフテリア/百日咳ワクチン(Tdapワクチン)接種により、新生児の百日咳抗体のレベルが最も高まることが示されたと、米国Baylor医科大学のC. Mary Healy氏らが2018年に報告しています。

 近年の日本での流行も、百日咳の免疫効果が弱まってしまっていることが要因のひとつです。追加接種しても、残念ながら免疫効果がずっと続く訳ではありませんが、流行の兆しがみられるいまこそ、予防接種を行うタイミングと言えそうです。

○山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。

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山本佳奈

山本佳奈

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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