「ゴミを放置する」行為は話にもならないが、それよりも意外に感じたのは「後ろからシートを蹴られた」という回答が圧倒的に多かったことだ。これについては、席を立ったり足を組み替えたりした際に当たってしまっただけ、という可能性もないとはいえない。しかし、1回目は「たまたまかな」と思っても、2度、3度と続いたら……後ろから蹴られて不快になるのは当然だが、注意する場合は売り言葉に買い言葉とならぬよう、きつい表現は避けたいところだ。

「私も席を立つ際に、ほかの人の座席や脚などに身体や荷物が接触してしまったことはあります。そういうときは、ひとこと『すみません』。よほどのめぐり合わせの悪さでもなければ、『ウッカリぶつかっただけ』であることは相手に伝わるものでしょう」(植村さん)

 このような利用者の多い電車や新幹線で起こりがちな、想定内ともいえるトラブルはもちろん未然に防ぐにこしたことはないが、植村さんによると、最近は航空機のエコノミークラスでも、リクライングを巡るいざこざが目立つという。
 
「とりわけ、LCC(ローコストキャリア)では座席の間隔が狭い航空会社も多く『狭い座席はお互いさま』なのに、当然のようにリクライニングを倒す人が多い印象です。あくまで個人的な感覚に過ぎませんが、中長距離の夜行便などはともかく、2~3時間程度のフライトだと『本当にリクライニングがしたくて座席を倒しているのかな?』といった、うがった見方をしてしまうこともありますね」(植村さん)

 ここまでの質問は「自分が受けたマナー違反・迷惑行為」に関してのものだが、逆に「公共交通機関を利用する際に、周囲の人に迷惑をかけないように意識しているか」という問いに対しては、9割以上の人が「意識している」と回答している。さらに「周りの人にしてもらって嬉しかった事や心温まった行為はあるか」という質問では、半数以上の人が「はい」と答えた。
 
「先日も大きなニュースとなった『あおり運転』ではドライブレコーダーが活躍しましたが、鉄道の一部でも、痴漢対策などを巡り車内への監視カメラの導入が進められています。ほんの小さなミスや少しの不注意は、誰にでも起こりえることですが、それが周囲にどう取られているのかまでは分かりません。でも、それが些細な出来事であっても、映像として記録されることが、本当に乗客のためになるのでしょうか。私自身もそうですが、監視や罰則という以前に、互いを思いやる気持を意識し合うことで、少しずつでもマナーの向上が期待できるのではないかと信じています」(植村さん)

 今回のアンケートでは「体調が悪い時に助けてもらった」「降りる際、通れるよう詰めて空間を開けてくれた」といった、他者への感謝も寄せられている。ただし、先に述べたように9割近くが「意識」をしていても、迷惑行為が決してゼロになることはない。

 夏の疲れが抜けず、つい気が立つことも増えそうなこの時期だけに、今一度「自分にも他人にも気分を害する行為」について、考えてみるのはいかがだろうか。

(AERA dot.編集部)

○調査概要
調査タイトル:「公共交通機関のマナー」に関するアンケート調査
調査対象:10代~70代の男女1,133名
調査期間:2019年7月23日~7月26日
調査方法:インターネット調査
調査主体:株式会社エアトリ