「やっぱり、あれでチームの流れも雰囲気も変わってしまいました」と望月監督。

 似たような事例では、13年の2回戦・延岡学園vs自由ヶ丘で、延岡学園の松元聖也が無死二塁で送りバントを試みた際に、右足が打席の外に出ていたことからアウトを宣告されている。

 これは野球規則6.06「打者が片足、または両足を完全にバッターボックスの外に置いて打った場合」が適用されたもの。

 手堅い作戦といわれるバントだが、一歩間違えれば、チャンスを広げるどころか、試合の流れすらも変えてしまいかねないだけに、本当に怖い!

 三塁打がベース踏み忘れで一転ライトゴロになる珍事が起きたのが、94年の1回戦、長崎北陽台vs関東一だ。

 5回に敵失に乗じて1点を先制した長崎北陽台は、6回にも先頭の開(ひらき)雄一が右翼線三塁打を放ち、追加点のチャンス。

 ところが、一塁手の高橋淳から「一塁ベースを踏んでいない」とアピールがあり、ボールが一塁に転送されて一転アウトに。記録はライトゴロになった。

 幸い、開は8回に2点目となる右前タイムリーを放ち、自らのバットで汚名を返上。この1点がモノを言って、チームも2対0で勝利した。

 試合後、開は「自分では踏んだつもりだったんですけど」と言いつつも、「実は、大会前の練習試合でも二塁ベースを踏まずに三塁打が消えたことがあるんです」ともうひとつの過ちまで白状。一度ならず二度までもベース踏み忘れで三塁打をフイにしてしまったことが明らかになった。

 今大会でも8月12日の2回戦で、聖光学院がベース踏み忘れで先制チャンスの二塁打を取り消され(記録は左ゴロ)、1点差で敗れただけに、次の打席でミスを取り返したばかりでなく、チームの勝利に貢献できたのは本当にツイていた。

 初戦を快勝して勢いに乗った長崎北陽台は2回戦で宿毛、3回戦で中越を下し、見事初出場でベスト8入り。開も全試合で打点を記録するなど4試合で13打数6安打4打点と大活躍だった。

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バット1本の場所で明暗が…