小説『神様のカルテ』著者×コラムニスト医師 医療情報を発信する共通項は?【大学同期の医師対談】

白石 圭dot.#ヘルス#病気#病院

京都大学大学院特定准教授でコラムニストの大塚篤... (08:00)dot.

京都大学大学院特定准教授でコラムニストの大塚篤... (08:00)dot.

新章 神様のカルテ
夏川 草介
9784093865319
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 コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動をおこなっている京都大学大学院特定准教授・大塚篤司医師の初の著書が8月20日に発売になった。AERA dot.の連載をまとめた『「この中にお医者さんいますか?」に皮膚科医が……心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版)だ。

 大塚医師は信州大学医学部出身で、同じ学年には、のちに小説『神様のカルテ』で作家デビューする医師の夏川草介さんがいた。お互い、大学時代はその存在を認識する関係だったというが、卒業後は「風の便り」で活躍を耳にするくらいで、会う機会はなかった。今回、大塚医師からの対談企画の呼びかけに夏川さんが応じ、大学卒業以来となる再会を果たした。二人は、なぜ医療情報を言語化するようになったのか? 対談からその背景が浮かび上がった。

*  *  *
大塚篤司(以下、大塚):夏川さんとは信州大学の同期で、大学時代は直接遊んでいたわけではないんですが、一緒に遊ぶグループが同じという、ワンクッション置いた関係でした。

夏川草介(以下、夏川):当時の大塚さんには、「頭の回転が速いな」という印象がありました。大学3年のときぐらいからすでに研究室で実験を始めていたんですよね。普通の大学生では考えられない。僕が部屋で延々と本を読んでいた一方で、「すでに研究を始めているやつがいる」と周りで話題になっていました。それをよく覚えていますね。

大塚:僕の中では、当時の夏川さんには、本を書くというイメージが全然ありませんでした。何か文章を書いているという話も聞かなかったし、のちに小説家デビューしたと聞いたときは驚きました。書き始めたのは卒業してから?

夏川:医師になって5年目の終わりぐらいからかな。それまで医療現場にいて、ものすごく忙しかったんですが、6年目で大学院に入ってすこし時間ができたんです。そこで、医療現場と大学院でみる世界とのギャップがあまりに激しくて、いろいろ思うところがあったんですよね。書いているときは深く考えていたわけではありませんが、自分の思いをまとめておきたい、と感じていたのかもしれません。

大塚:それが小説という形だったんですね。

夏川:実は、妻に「何か書いてみたら」と提案されたのがはじまりだったんですけどね。思っていたことを書いてみて、妻に見せたら、いつの間にか小学館の賞に送られていました。それから1年ぐらい経って小学館から連絡があった、という流れです。

大塚:ということは、デビューは大学院に入ったばかりの頃? ちょうど最新刊の『新章 神様のカルテ』に描かれているのと同じ頃だったわけですね。実は、僕は『神様のカルテ』が大好きで、映画も全部見ましたし、DVDも買いました。今日は、サインをしてもらおうと『新章 神様のカルテ』を持ってきました(笑)。

夏川:ありがとうございます(笑)。僕も、大塚先生の書籍『心にしみる皮膚の話』のオビに推薦文を寄稿させてもらうにあたり、事前に原稿を読ませてもらいましたが、ずっと悩んでいたんだろうなというのが伝わってきました。迷ったことや苦しんだこと、もやもやしたものを文章にすると、自分が本当は何に悩んでいたのかに気づきますよね。文章を書くというのは、そういう作業なのだろうと改めて思います。

 最初は皮膚科の豆知識の話かなと思ったけれど、だんだん重くなってくる。たぶん書きたかったのはそこだったのかなと。入りとしては楽しく読んでいて、途中からカラーが変わってくる。最初は一般的な皮膚科医のコラムニストだったのが、だんだん「大塚」という一人の人間が書いているものになった。3分の2ぐらい読んだところから懐かしいなあと思えてきました。

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「医療は複雑で難しい、プロフェッショナルの分野」(夏川)

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