藤田は球速108~110キロと上野よりは劣るものの、敵との駆け引きがうまくなり、メンタル的にも落ち着いてきた。さらに、所属の太陽誘電では2016年日本リーグでホームラン王と打点王の両方を獲得している通り、打者としても非常に有能だ。そこは指揮官も高く評価する点。28歳と旬の年齢でもあるだけに、ジャパンカップでさらなるブレイクを遂げ、「上野に並ぶ大黒柱」へと飛躍してくれれば理想的なシナリオだ。

 それ以外の投手陣を見ると、31歳のベテラン左腕の尾崎望良(太陽誘電)、24歳の中堅である濱村ゆかり(ビッグカメラ高崎)と岡村奈々(日立)、19歳の勝股美咲(ビッグカメラ高崎)らがいるが、いずれも宇津木監督が「大勝負を託せるピッチャー」と認めるレベルには達していないようだ。

「30代の尾崎は経験があり、左投げで変化球も持っている選手だけど、1試合を任せるのはまだまだかなと。濱村や岡村も同じくらいのレベルなんで、部分的なところで力を発揮してくれればいいと考えています。若い勝股も才能はありますが、少し前に守備で自滅した試合があった。今日いいピッチングをしても、次の日はダメという感じで波があるし、1年後の東京五輪を考えると柱になるのは難しいかもしれない。やっぱり上野が戻って藤田と2人でチームを背負い、他のピッチャーは1イニングでも2イニングでも投げられるようになってもらうしかないと思います」と宇津木監督は厳しい表情をのぞかせる。

 つまり、上野への依存度の高さは依然として大きいと言わざるを得ないのが、ソフト女子の現状なのだ。その大黒柱が今月末のジャパンカップで完全復活を遂げ、「1年後は問題ない」というところを示してくれればいいが、果たして指揮官の思惑通りに物事が進むのか。いずれにしても、日本の12年ぶりの金メダル獲得は上野、藤田を軸としたピッチャー陣の動向にかかっているといっても過言ではない。(文・元川悦子)