奪三振対決を繰り広げた東北のダルビッシュ有 (c)朝日新聞社
奪三振対決を繰り広げた東北のダルビッシュ有 (c)朝日新聞社

 第101回全国高校野球選手権大会が開幕し、今年もどんなドラマが生まれるか大いに楽しみだが、懐かしい高校野球のニュースも求める方も少なくない。こうした要望にお応えすべく、「思い出甲子園 真夏の高校野球B級ニュース事件簿」(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に、夏の選手権大会で起こった“B級ニュース”を振り返ってもらった。今回は「常識を超えたビックリの結果編」だ。

 満塁本塁打を浴びるなど計9点を失ったのに、自責点ゼロというウソみたいな結果となったのが1981年の1回戦、報徳学園vs盛岡工だ。

 甲子園初出場の盛岡工は、エース・北田登志夫が1回、先頭の高原広秀を三振に打ち取り、幸先の良いスタート。だが、2番・大谷晴重に二塁内野安打を許したあと、次打者・石田健の何でもない当たりの二ゴロを、セカンドがファンブル。さらに4番・金村義明にも四球を許し、1死満塁のピンチを招く。

 次打者・西原清昭は遊ゴロ。内野陣は前進守備とあって、格好の併殺コースだったが、ショートがファンブルして、本封アウトのみの2死満塁となったことが大きく祟る。直後、6番・岡部道明に左越え満塁弾を浴び、4点を失った。

 2回も1死二塁から三ゴロエラーでピンチを広げ、これまた2死後に3連打で3失点。打たせて取るタイプの北田がせっかく内野ゴロに打ち取っているのに、バックが足を引っ張るという悪循環で、お気の毒にも2回途中でKOとなった。

 さらに4回にも2死一塁から右翼手が痛恨のエラー。直後、連打で2点を追加され、終わってみれば、0対9の完敗……。

 だが、9失点の内訳をみると、いずれもエラー絡みで、打球をきちんと処理していれば、失点する前にスリーアウトチェンジになっていたため、満塁本塁打を打たれたのに自責点ゼロという珍事に。守備の乱れさえなければ、この年の優勝チームを相手に、1点を争う大接戦を演じていた可能性もあっただけに、本当にもったいなかった。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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