沖縄は独特の名字が多く、豊見城、沖縄水産を率いた栽(さい)弘義、興南の監督として10年に沖縄史上初の春夏連覇を達成した我喜屋(がきや)優の名将2人も、全国的に有名になったことで、珍姓のイメージが薄れた感がある。

 そんななかで、今でも高校野球ファンに強烈なインパクトを残しているのが、04年に中部商の一塁手として出場した阿波根(あはごん)直幸だ。

 180センチ、110キロの堂々たる体格に加え、青々としたスキンヘッドのいでたちは、まさに“怪童”の名にふさわしく、“アハゴン”は本名にもかかわらず、“ゴジラ”松井秀喜のような威圧感があった。

 6番を打つ阿波根は、沖縄大会決勝の沖縄水産戦で、同点と勝ち越しにつながる2本の二塁打を放つなど4打数3安打と大当たり。甲子園でも活躍が期待されたが、初戦の酒田南戦で、2回1死三塁の先制機に、ベンチからスクイズのサインが出ていたにもかかわらず、「セーフティーと勘違いして」バットを引いてしまったのが祟り、三塁走者は本塁憤死。直後、甲子園初安打となる左前安打を放ったが、あとの祭り。6対11で無念の初戦敗退となった。

 ちなみに同校のエース・金城宰之左(すずのすけ)も、漫画「赤胴鈴之助」に由来する難読の珍名として話題を集めた。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2018」上・下巻(野球文明叢書)。

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久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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