えちごトキめき鉄道とJR在来線との接続駅は直江津と糸魚川のみ。「青春18きっぷ」は5日(回・人)ぶんで1万1850円だから、2370円が1日あたりの損得分岐点になる。えちごトキめき鉄道管内だけでなく、「青春18きっぷ」を使う行程を工夫しておかないと、ウマ味を享受できない可能性も出てくるのだ。

 ちなみに、JR在来線接続駅の直江津~糸魚川間の普通運賃は670円。単なる通過だけであれば「トキ鉄18きっぷ」の出番はない。

 しかし、えちごトキめき鉄道は、妙高をはじめとする山岳風景や日本海間近を行くなどの車窓美に恵まれている。また、スイッチバック駅・二本木やトンネル駅・筒石などの見どころが多いのも特徴だ。せっかくのフリーパスなのだから、いくつかのポイントで途中下車を楽しみながら旅を満喫してみたい。

 ここでは一例として、直江津からスタートし、線内の主な見どころで途中下車を楽しみつつ、糸魚川から大糸線に乗り継ぐプランを立ててみた(表2)。

 えちごトキめき鉄道全線を巡るこの案だと、「トキ鉄18きっぷ」1000円に対し、同社線の普通運賃は2860円(新井駅では下車せずに、列車乗り継ぎのみで計算)とかなりおトクといえる。

 大糸線全線にあたる糸魚川~松本間の普通運賃は2270円とわずかに「青春18きっぷ」1日ぶんに届かないが、松本から篠ノ井・中央本線を乗り継ぐと、東京着は23:22(土休日は23:29)、名古屋着は22:22となり十分にモトが取れる。

 名古屋からは米原などにその日のうちに到着ができるほか、東京行き臨時快速「ムーンライトながら」(名古屋発23:18)への乗り継ぎも可能だ(運転日注意)。

 なお、えちごトキめき鉄道の乗り放題きっぷとして、土休日限定ながら「トキめきホリデーフリーパス」(大人1000円、子ども500円)も2019年9月30日まで発売されている(利用は10月27日まで)。連続する2日間が乗り放題となるので、旅行日や行程次第ではこちらをチョイスしてもよさそうだ(「青春18きっぷ」所持に関係なく購入・利用可)。

 このように、第三セクター鉄道が打ち出すフリーパスにも注目すれば、沿線の観光スポットへの立ち寄りやグルメ、列車撮影など、アイデア次第で旅の楽しみをさらに広げることができるはずだ。(文・植村 誠)

○プロフィール
植村 誠(うえむら・まこと)/国内外を問わず、鉄道をはじめのりものを楽しむ旅をテーマに取材・執筆中。近年は東南アジアを重点的に散策している。主な著書に『ワンテーマ指さし会話 韓国×鉄道』(情報センター出版局)、『ボートで東京湾を遊びつくす!』(情報センター出版局・共著)、『絶対この季節に乗りたい鉄道の旅』(東京書籍・共著)など。