NECによると、今回のミニの原型であるPC-8001は1979年9月に発売された。当時はインベーダーゲームが大流行し、音楽機器では持ち運べるウォークマンなども出回り始めた時代。アニメ『ドラえもん』の放送が始まり、プロ野球では江川卓が巨人に入団した年でもある。「ナウい」という言葉が流行したのもこのころだ。パソコンを個人で所有する人が少ない中で、同機は当時としてはなんとか手が届く価格(16万8000円)であったことに加え、それまで組み立て式が主流だったなかで、最初から組み立て済みの製品として発売されたことで広く普及した。

 前出の河嶌氏も、同機の功績を次のように指摘する。

「マイクロソフトのBASICを採用して『標準仕様』を宣伝したことで、当時PCメーカーごとにOSの仕様まで異なっていたパソコン業界のスタンダードになりました。PC-8001は、今のパソコンの考え方では当たり前である、個人用機と業務用機を峻別しない、という設計思想に基づき、大量生産することでコストダウンを図ったというのもあります。結果的に、同業他社製品よりも高い性能にもかかわらず、16万8000円という安さを両立させることに成功しています。また教育現場での導入の先駆けでもあり、1981年に神奈川県立茅ヶ崎西浜高等学校が17台のPC-8001を導入し、普通科高校で初めて選択科目として情報教育を始めたという歴史もあります」

 PC-8001について「夢のような機械だった」と思い出を語る男性会社員(49)は、ミニ版を手に取り懐かしむ一人だ。

「PCとファミコンのどちらを買うかで当時は悩んだものです。8001はゲームもできるし、改造して自分流に楽しむこともできる。プログラミングを学んだのもこの機種からでした」
 
 オヤジ世代を狙ったこの戦略、果たしてプログラム通りにうまくいくのか?(AERA dot.編集部/井上啓太)