■アルコールの多飲は乳がんや神経障害も発症

 たとえば、乳がんのリスクが高まる。とくに女性では少量の飲酒でも乳がんリスクは高い(Bagnardi V et al. Ann Oncol. 2013 Feb;24(2):301–8)。とくにホルモン療法を受けている方だと、アルコールはさらにリスクを高める(Chen WY et al. Ann Intern Med. 2002 Nov 19;137(10):798–804)。ほかにも口から喉にかけての、いわゆる「耳鼻科系のがん」はアルコール摂取がリスクになる。食道がんもアルコールがリスクだ(Thun MJ et al. N Engl J Med. 1997 Dec 11;337(24):1705–14)。
 
 また、アルコール多飲はさまざまな神経障害も起こす。アルツハイマー病などの認知症も増えるという意見もあるが、逆に飲酒によってアルツハイマー病が減るというデータもあり、見解の一致を得ていない(Charness ME. Alcohol Clin Exp Res. 1993 Feb;17(1):2–11.1、Huang W-J et al. Exp Ther Med. 2016 Sep;12(3):1247–50)。

 また、最近の研究では「適量の」アルコール飲酒も長期的には脳の海馬(記憶の拠り所とされる)の萎縮や朗読の滑らかさの減退に関係していた(Topiwala A, Allan CL, Valkanova V, Zsoldos E, Filippini N, Sexton C, et al. Moderate alcohol consumption as risk factor for adverse brain outcomes and cognitive decline: longitudinal cohort study. BMJ. 2017 Jun 6;357:j2353)。

 もっとも、この研究では少量飲酒者も大量飲酒者も認知能力の低下のスピードには差がなかったという意外な結果も示している(非飲酒者が一番低下のスピードが低い)。

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飲酒と喫煙の関係