FC今治の岡田武史氏 (c)朝日新聞社
FC今治の岡田武史氏 (c)朝日新聞社

 サッカー元日本代表監督、岡田武史氏がオーナーで立ち上げたチーム、FC今治。結成時はかなり話題になったが、その後の動向はコアなサッカーファンしか知らないのではないか。なぜ今治で挑戦しようとしたのか、果たして地元は盛り上がっているのか。そういったところを探ってみたくなり、今治まで取材に赴いた。

「地元の人たちも何がなんだか、わからなかったと思う。とりあえず岡田武史さんがなんかやっているから行ってみよう、という祭りのような感覚だったんじゃないかな」

 そう語るのは写真家・ノンフィクションライターの宇都宮徹壱氏だ。宇都宮氏は様々なカテゴリーに足を運び、現在JFLのFC今治も常にカバーしている。

 JFLでは500人前後の観客数もざらである。その中で1試合平均観客数3000人に迫るFC今治は突出した存在だ。

「岡田さん就任からここまでの流れの中で、『スタジアム=箱』ができたというのはかなり大きかった。サッカー専用スタジアムでトップリーグを目指すプレーを、手の届く場所で見られる。おもしろいはずですよ」

■立地のみでなく細部にも注意を払ったJFLのスタジアム

 17年8月に完成した本拠地『ありがとうサービス.夢スタジアム』は、JR今治駅から車で約15分、スポーツパーク内の一角に山を削って造られた。バックスタンドは設けられておらず、その先には瀬戸内海を見渡せる絶景が広がる。試合中、海の上に彩やかな虹がかかることもある。

 また、立地条件のみでなく、現状でスタジアムの必要条件と言えるものも充実している。例えば、情報の発信基地となるメディアルーム。「会見場も一緒なので、狭くて……。すみません」と広報担当は語っていたが、十分な設備だ。フリーWifiはもちろん、電源確保のため、十分なコンセントやコンセントタップが常設してある。小腹を満たすお菓子なども置いてあり、うれしい限りである。

「JFLレベルですごい。うちなんて何もない会議室」とFC大阪担当記者が驚いていたのに納得(FC大阪はJ3ライセンスを持たない)。競技は違えど、普段、野球取材で足を運ぶ一部NPB球場よりも充実している感じを受けた。SNSをはじめ、あの手この手を使い、チーム認知度を高めようという思いも感じさせる。

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大きな目標も現実は甘くなく…