大船渡の佐々木朗希(c)朝日新聞社
大船渡の佐々木朗希(c)朝日新聞社

 2017年からお届けしている『夏の甲子園で見たかった、地方大会で敗れた選手の中から選ぶベストナイン』。一昨年は夏の地方大会で敗退した選手(下級生時や春の選抜に出場した経験のある選手も含む)、昨年は春夏通じて一度も甲子園に出場したことのない選手、と少し選考対象が異なったが、今年は昨年と同じく甲子園の土を踏むことなく高校野球生活を終えた選手のみを対象として選んでみたいと思う。

 投手は文句なしで佐々木朗希(大船渡)になる。その凄さはあらゆるメディアで取り上げられ、さらにこの夏は岩手大会の決勝で出場を回避したことで大きな論争が起こるなど、もはや高校野球という枠を超えた存在と言えるだろう。甲子園に出場経験がないのにもかかわらず、ここまでの国民的な話題となった選手は史上初ではないだろうか。

 ただ、佐々木だけでは、やはりありきたりすぎるので、左投手からも一人選んでみたいと思う。いずれも地方大会での決勝で敗れた井上温大(前橋商)と玉村昇悟(丹生)の二人で最後まで悩んだが、フォームの完成度の高さから井上を選出したい。

 174cm、67kgと最近の高校生にしては小柄な部類に入り、ストレートも大半は130キロ台後半だが、とにかくそのフォームが美しいのだ。振りかぶって右足一本で真っ直ぐに立ち、わずかにクロスに踏み出すものの、ステップの幅も広く、体重移動も実にスムーズ。テイクバックで肘がきれいに立つので縦に鋭く腕が振れ、上背以上にボールの角度があるのも持ち味だ。この夏の初登板となった7月9日の対富岡戦では9球団、35人のスカウトが集結したことからも、その注目度の高さがうかがえる。体がしっかりできてくれば、杉内俊哉(元巨人)のような投手になれる可能性を秘めたサウスポーだ。

 夏の甲子園でも注目選手が多い捕手は友田佑卓(九州学院)を選んだ。体つきは決して大きくはないものの、俊敏なフットワークで無駄な動きのないスローイングは一級品。下級生の頃は内野手として出場していたとは思えない落ち着きがあり、キャッチングも安定している。新チームでは常に中軸を任され、左打席からの力強いバッティングも高レベル。この夏も1回戦で左中間に一発を放った。打てる捕手として育てたい素材だ。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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