東京都在住の森田実さん(仮名・63歳)は40代から健診のたびに肥満と高血圧、高尿酸血症を指摘されていたが放置していた。しかし、3年前、痛風発作を繰り返すようになったことで近くのクリニックを受診。検査を受けると尿酸値が高いだけでなく、血圧が160/100ミリメートルHgもあった。さらにeGFRは27でCKDのステージ4だった。そこで主治医は土谷医師を紹介した。

「患者さんは身長172センチで体重89キロ。BMIは30・08(22前後が理想)で見るからに肥満でした。検査結果を見せて、『このままだと間違いなく人工透析になりますよ』と言うと、大変驚き、『心を入れ替えて治療に専念する』とおっしゃいました」(土谷医師)

 薬物治療として尿酸値を抑えるフェブキソスタット、血圧を下げるアゼルニジピン(カルシウム拮抗薬)とロサルタン(ARB)などを服用してもらった。

 その結果、1年後には血圧は130/82に低下し、eGFRは30・6でステージ3bに改善した。10キロの減量にも成功した。治療開始から3年目になるが、直近の検査結果ではeGFRは34・2とさらによくなったという。

「この10年、新しい薬が複数、登場していることがCKDの進行抑制につながっています。高血圧治療薬のARBやACE阻害薬、糖尿病治療薬のSGLT2阻害薬などには腎機能低下を抑える効果が確認されています」(同)

 また、現在、CKDそのものに対する薬の開発も進んでいる。協和キリンが開発している「バルドキソロンメチル」という薬で、開発が成功すれば世界初のCKD治療薬となる(現在、糖尿病性腎症を対象に第3相臨床試験を実施中)。(文/狩生聖子)

東京女子医科大学病院
血液浄化療法科教授
土谷健医師

聖路加国際病院
腎センター長
中山昌明医師

週刊朝日  2019年8月9日号から一部抜粋