また、腎臓は赤血球の産生を促すホルモンを作っており、CKDが進むとこのホルモンの産生が低下するため、貧血も進んでくる。心臓への負担から心不全や肺水腫など命にかかわる合併症も起こりやすくなる。

 なお、日本におけるCKD患者は約1330万人といわれる。国民の10人に1人がCKDを患っているというのだから、他人事ではない。

 CKDの原因として最も多いのが糖尿病だ。聖路加国際病院腎センター長の中山昌明医師はこう言う。

「高血糖により、毛細血管の塊である糸球体が障害され、硬くなります。また、糸球体から血液中のアルブミンなどのたんぱくが漏れることで、腎臓の尿細管や間質という部分も炎症→線維化というプロセスを経て、傷んでしまうのです」

 しかし、糸球体は一部が壊れても他の糸球体が代償するため、CKDの症状は進行するまであらわれにくい。自覚症状を感じて病院に行ったときには、「即、人工透析」というケースは決して珍しくないのだ。

「CKDにならない、進行させないためには健診でeGFRの数値を必ずチェックすること。できれば数年分を確認し、急激に低下していないか調べるといいでしょう」(中山医師)

 腎機能は個人差が大きいものの、一般的には40代前半をピークに加齢とともにeGFRは年間約1未満程度低下していく。一方、CKDを発症している人の中にはこれが倍以上のスピード(年間2ずつ低下)で低下する例もあるというから、怖い。

「例えば50歳でeGFR60くらいの人が治療せずにいると75歳で10未満となり、人工透析になる可能性が高い。一方、治療で悪化が防げれば加齢の分だけの低下にとどまり、85歳でeGFRは25程度。風邪や脱水など不可抗力で腎機能が落ちることもありますが、人工透析を受けずに十分に天寿を全うできる人が多いのです」(同)

 なお、75歳を過ぎた高齢者で、eGFRが50程度であっても、数年来、値が横ばいで、尿たんぱくも陰性であれば心配はいらない。むしろ、健康の範疇だ。

 CKDの治療は、主な原因となる糖尿病をはじめとする生活習慣病対策だ。塩分制限などの食事療法や運動療法、薬物療法などをおこなう。土谷医師は、

「生活習慣が乱れている人ほど、生活指導などによる改善効果も大きい。特に尿たんぱくが出ていなければ予後の指標となり、eGFRが改善するケースもみられます」

 と、こんな例を紹介してくれた。

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腎機能低下を抑える新薬が広まる